間取りのセカンドオピニオンで一級建築士の船渡亮(ふなとあきら)です。この記事では、熱交換換気(熱交換器)のしくみと種類、採用するメリットを解説します。
この記事でわかること
- 熱交換換気とは何か
- 全熱交換と顕熱交換の違い
- 熱交換換気を採用する3つのメリット
熱交換換気とは?
新築住宅は建築基準法で、2時間に1回、部屋の空気をすべて入れ替えるよう換気を計画することになっています(24時間換気)。
一般的な換気(第3種換気)では、冬は冷たく乾いた外気が、夏は暑く湿った外気が、そのまま部屋に入ってきます。その空気をエアコンで暖めたり冷やしたりするのは、省エネとは言えません。せっかく空調した空気を外に捨てるのも、もったいない話です。
そこで生まれたのが、外に出す空気の熱を回収して、取り入れる外気を暖める(冷やす)しくみです。給気も排気も機械で行う第1種換気に熱交換器を組み合わせたもので、熱交換換気と呼ばれます。
たとえば外気0℃・室温20℃で、熱交換率が90%なら、0℃の外気を約18℃まで暖めてから部屋に入れられます。

熱交換器は「全熱」と「顕熱」の2種類

全熱交換器:温度と湿度を交換する
全熱交換器は、外に出す空気から温度(顕熱)と湿度(潜熱)の両方を回収します。同じ温度でも湿度が高い空気の方が熱量が多いので、省エネ効果は高くなります。
- 冬は室内の乾燥がやわらぐ
- 夏や梅雨どきは、外の湿気が入りにくい
- 夏が高温多湿な地域に向いている
- 浴室やトイレなど、湿気やにおいの強い場所の空気は回収できない(別に排気する)
- 長く使うと、熱交換素子の交換が必要になることがある
浴室やトイレの空気を回収できない理由は、トイレと洗面所にロスナイを付けてはいけない2つの理由で解説しています。代表的な製品には、三菱電機のロスナイやダイキンのベンティエールなどがあります。
顕熱交換器:温度だけを交換する
顕熱交換器は、外に出す空気から温度(顕熱)だけを回収します。湿度を交換しない分、全熱交換器より省エネ性は劣りますが、浴室やトイレを含めた家全体の空気を、まとめて換気の計画に入れられます。
- 湿気もにおいも回収しないので、浴室やトイレの空気も扱える
- 樹脂製の熱交換素子は、水で洗えるものもある
- 寒冷地や、ペットのにおいが気になる家に向いている
- 夏、外の湿度が高いと、湿気がそのまま入ってくる
- 冬は水まわりの湿気も外に出すので、家全体が乾燥しやすい
どちらにもメリットとデメリットがありますが、冬の乾燥を考えると、日本では全熱交換器の方が快適だと思います。採用できる機種は住宅会社によって違うので、打ち合わせで確認しましょう。
| 全熱交換器 | 顕熱交換器 | |
|---|---|---|
| 交換するもの | 温度+湿度 | 温度だけ |
| 省エネ性 | 高い | やや劣る |
| 冬の乾燥 | やわらぐ | 乾燥しやすい |
| 浴室・トイレの空気 | 回収できない(別に排気) | 回収できる |
| 向いている家 | 夏が高温多湿な地域 | 寒冷地、ペットのいる家 |
熱交換換気を採用する3つのメリット
1. 外気が室温に近い温度で入るので快適
一番大きいメリットがこれです。冬に部屋を20℃に暖めても、給気口から0℃の空気が入ってきたら寒いですよね。熱交換換気なら、室温に近い温度の空気が入ってくるので、給気口の近くが寒いという不快感から解放されます。
2. 部屋にCO2やにおいがこもらない
冷たい空気が入ってくると、給気口を閉めたくなります。でも閉めてしまうと、換気が足りなくなり、空気が汚れてしまいます。
特に寝室は、家族で一晩寝るとCO2濃度が基準を超えてしまうこともよくあります。私の家の6畳の寝室も、換気を止めて家族4人で寝た朝は、空気がかなり汚れた感じがしました。寒さのストレスなく換気を続けられるのは、熱交換換気の大きなメリットです。
3. 湿度を一定に保ちやすい
全熱交換器なら湿度も交換するので、乾いた外気がそのまま部屋に入ることがありません。
よく、珪藻土やエコカラットの壁には調湿効果があると言われますが、その効果は一時的です。水を含ませたスポンジを乾いた部屋に置いておくと、1日でカラカラになりますよね。スポンジが乾いてしまえば、それ以上湿気は出せません。珪藻土も原理は同じで、乾燥した日や雨の日が続くと、調湿効果は働かなくなります。
手ざわりやデザインで珪藻土やエコカラットを選ぶのは良いと思いますが、調湿機能に過度な期待は禁物です。本当に湿度を安定させたいなら、全熱交換器が一番確実です。
アキラ先生熱交換換気は、高気密・高断熱の家でこそ効果を発揮します。気密性能とセットで考えましょう。
まとめ:快適さと健康を両立するなら熱交換換気
熱交換換気は、寒さや暑さを抑えながら、きちんと換気を続けられるしくみです。日本の気候なら、冬の乾燥をやわらげられる全熱交換器がおすすめです。ただし、気密性能が低い家ではすき間から空気が出入りしてしまい、効果が十分に出ません。
気密性能についてはハウスメーカーや工務店のC値が一目でわかる気密性ランキングで、換気の大切さは住宅に熱交換器が必要な本当の理由で解説しています。



換気の方式は、間取りや窓の計画とも関係します。気になる方は、間取りと一緒に確認してみてくださいね。
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