私が設計した多くの住宅で、 熱交換型の第一種換気を採用してきました。多くの住宅メーカーが、第3種換気が設置する中、 コストアップにつながる提案をするのは、 なぜだと思いますか?
理由は二つです。
1.常に新鮮で清浄な空気環境を保つため
2.換気による熱損失を減らすため
では、詳しく説明してきますね。
1.常に新鮮で清浄な空気環境を保つため
ナイチンゲールは、 「看護覚え書き」の中で、 看護における第一原則として、「患者に寒い思いをさせることなく、室内の空気を清浄に保つこと」を上げています。 これは、健康な人にとっても重要なことです。
確かに、第3種換気の場合でも、 「室内の空気を清浄に保つこと」 、 は可能ですが、 「寒い思いをさせることなく」という点が難しくなります。なぜなら、熱交換器があれば外気は室温に近い温度になって室内に入りますが、第3種換気の場合は、外気温そのままの空気が室内に入ります。
人は、「不快なこと」は大嫌いです。
2月の極寒の夜に、 0度の外気が部屋に入ってくる、 というのを我慢できる人はどれだけいるでしょうか?恐らく寒さに負けて、給気口を閉じてしまいます。そうなると、 「室内の空気を清浄に保つこと」 は難しくなります。
室内の二酸化炭素濃度の基準は、 1000ppm以下と言われていますが、換気が止まった状態では、 あっと言う間に、1000ppmは超えてしまいます。心地よい空気にするために、 珪藻土を壁に使ったり、 無垢のフローリングにする、 ことは大事ですがあくまでオプション的です。
美意識の高い建築家は、「窓を開ければ済むじゃないか?」といいますが、私たちはそんなに意志は強くないし、ナイチンゲールが言うように、風邪をひいている時に寒い思いはしたくはありません。まずは、ストレスなく確実に換気できる環境を作る、 ことが基本なのです。
2.換気による熱損失を減らすため
建築に断熱が必要なのは、 室内の空気の熱を、外部に逃しにくくするためです。外部へ熱が逃げることを、熱損失といいます。部位別の熱損失の割合は、
窓 4割
外壁 2割
換気 2割
床、天井 2割
と言われています。窓の4割って、大きいですよね。高気密高断熱にこだわる場合、 まず、窓の断熱性能を良くする、と言われますが、 これは熱損失の大きさが理由になっています。次に外壁ですが、 外壁の断熱性能を上げるのは、 実はとても大変です。コストがかかる割には、 成果が出ないのです。
それに比べて、換気は、
第3種換気 → 第一種の熱交換
に変えるだけで、 大幅に断熱性能がアップします。
これまで、外気がそのまま室内に入っていたのが、 室内温度に近い状態で入ってくるのですから、 そりゃ、違いますよね。パッシブハウスジャパン理事の松尾和也さんによると、 Q値を0.35程度下げることが出来るそうです。これは、次世代省エネ基準でいうと、
Ⅳ地域(東京など) Q値=2.7
↓
Ⅲ地域(山形、新潟)Q値=2.4
とすることが出来ます。コストは、規模にもよりますが、 50~70万円程度です。コストの問題で、 第3種換気を選択せざるを得ない場合は、 寒くないように暖房器の近くに給気口を設置するなど、 配慮が必要ですね。
では!
>>換気を学ぼう2