一級建築士で家づくりコンサルタントの船渡亮(ふなとあきら)です。仕事柄、沢山の家づくり本を読んでおりますが、その中で家づくり初心者にまずは読んで欲しい本を選びました。
私自身も2024年1月に、初心者向けの間取り本 講談社+α新書『この間取り、ここが問題です!』を出版しました。家や間取りに関心がある人全てが楽しめる内容にしましたので、こちらも紹介いたします。
本の選択基準
家づくり本は沢山ありますが、 ほとんどは、「ハウスメーカーや工務店の営業ツール」として出版されたものです。
私が以前いた工務店でも、PHP出版から本を出して、営業に使っていました。 いい家を建てる!などは、(中身はともかく)営業ツールとして成功した例のひとつですね。
それらを読むのも悪くはないのですが、 色々読むと、主張がそれぞれ違うので、色々読むと混乱してしまいます。
また、あくまで、営業ツールなので、 読んでいくと出版した会社に頼むのが、一番良い、という結論になってしまいます。
そのため「初心者向け」ということを考え、特定の工法を勧めるのではなく、 施主が先ずは知っておくべき家づくりの基本や考え方、概要がわかる本、という基準で選んでいます。
特に、30代から40代の子育て世代を想定したセレクトになっています。
まず最初に読む3冊
注文住宅を建てようかな?って考え始めた時に、まず読むべき本を3冊セレクトしました。写真は全て自前の本を撮影しているので、若干の汚れ等はご勘弁くださいね。
1.はじめて家を建てました!(あべかよこ)
ドキュメントとノウハウをバランスよく詰め込んだ、 家づくりの入門書です。
漫画家のあべかよこと夫が、ハウスメーカーを決めて竣工するまでの様子を、まんがで丁寧にわかりやすく描いています。これを読むと、家づくりの全体像がわかるので、 よくわからないことからくる不安が解消されると思います。
またハウスメーカーの営業とのやりとりや、 現場でよくありがちな事件(床が雨に濡れて大丈夫なの?)など、 実際に家を建てた人でないとわからない内容も多く、説得力があります。
バーチャルな家づくり体験を出来るのが魅力ですね。
物語に登場する「家づくりのプロ」小野さんのアドバイスが、 的を得ていてわかりやすいです。 こんな専門家のアドバイスがもらえたら、、、って読んでいる方は、 思うかもしれませんね。
2.正直不動産(大谷アキラ)
山下智久さん主演でドラマにもなっている不動産業界や取引の内情がわかるマンガです。主人公は、地鎮祭のときに祠を破壊してしまったことで、ウソを付けなくなった不動産会社の営業マンです。
不動産業界は、「千の言葉のうち真実は三つしかない」という意味で、千三つといわれるらしいのですが、実際、法律も複雑で物件ごとに状況が違うので一般の方にはわからない事も多いですね。
これらを一から学ぶとなると大変ですが、「正直不動産」では様々なケースが取り上げられているので、何に対して気を付ければ良いのか? がなんとなくわかるようになっています。
これまで14巻(2022年4月時点)発売されているのですが、注文住宅を検討している方にお勧めなのは、以下の巻です。基本、2話完結なので途中だけ買っても話にはついていけると思いますよ。
2巻 建築条件付き土地売買
5巻 再建築不可
7巻 公簿売買
8巻 契約解
9巻 通行地役権
12巻 建築確認
3.この間取り、ここが問題です!(船渡亮)
手前味噌ではありますが、私、船渡が執筆した講談社+α新書の『この間取り、ここが問題です』はかなりオススメです。
10年間で間取り診断した3000事例のうち、25事例に焦点を当てて、家事動線・子育て・セックスレスなどテーマごとに分類し、間取りの問題点とその改善方法を解説しました。
間取りのビフォー・アフターとしても楽しめるのですが、「注文住宅」と「家族の暮らし」の関係性を、様々なエビデンスを用いて論じているので、「住宅論」としても読みごたえがあると思います。
とはいえ、なるべく専門用語は使わず平易な言葉で書きましたので、これから家づくりする!マンションや建売を購入したい!という方にとっても読みやすい内容です。
参考までに各章の見出しを記載しますね。
第1章:なぜ間取りの印象と実際の暮らしは違うのか?
第2章:間取りで暮らしを理解する方法
第3章:家事時短できない日本の間取り
第4章:子育てで不機嫌になる間取り
第5章:セックスレスになる間取り
第6章:人生100年時代に対応できない間取り
第7章:流行りだけど<取り扱い注意>な間取り
家づくりが始まったら
「土地探し」「ハウスメーカー選び」など家を建てるための行動を始まったら、読んだ方が良い本を選びました。より実践的な内容になっています。
4.最高のハウスメーカー&工務店選び2024-2025(船渡亮:電子書籍)
注文住宅を建てる上で、特に重要といえる「住宅会社選びの方法」について特化して解説した本です。2017年にシリーズ1作目を発売して以来、本作で7作目となるシリーズ本です。
2024年版の住宅会社の選び方の他に「防犯をアップデートせよ」という特集記事や、「優良住宅会社300社リスト」「間取りで暮らすヒント(間取り講座)」といった付録も充実しています。
5.間取り図でわかる買っていい家悪い家(堀清孝)
著者は、 「住まいの水先案内人」という家づくりのホームページを主宰し、 住宅コンサルティングも行っている堀清考さんです。私は面識はないのですが、とても良質な記事や書籍を出されていて、 私もたびたび参考にさせていただいています。
タイトルに、「間取り図でわかる、、、」とありますが、 間取りに関することは1章の一部のみなので、そこを期待すると、 「あれ?」って感じではあるのですが、「家を買う」ための基準や、 ハウスメーカー、工務店選びについてなど、 実際的な知識が盛り込まれていて、かなり参考になります。
家づくりの流れは分かって、間取りについても勉強して、 いざ、家づくりを始めよう!って時に読むと、 役立つ内容がたくさんあります。
徹底した現実主義で、家づくりの知識を紹介しているので、施主にとってかなり使える本です。
また堀さんは、私と同じく家づくりのコンサルティングが専門で、客観的な立場で話せますから、施主としても安心して読むことが出来ます。
注文住宅の他にも、マンションや建築条件付き住宅、 土地の売買についても書かれており、 「家」の購入に関する知識は網羅されています。
間取り検討に役立つ本
間取り検討に役立つ本を紹介します。ただ間取りを勉強したいからといって、施主の自作の間取りをハウスメーカーに渡すというのは、失敗の元なので、「絶対に」やめた方が良いのです。理由は下記ブログに書いています。
施主が、間取り検討時にすべきことは、提案された間取りをジャッジすることです。そのための知識を得るための本を紹介しますね。
6.家事ゼロ動線の教科書(船渡亮:電子書籍)
前述の『この間取り、ここが問題です』では、間取りに関わる問題を広く扱っていますが、本書では、家事動線に特化して、解説を行っています。実際に間取り検討の始めた方に読んで頂きたい本です。
ちなみに、本書の表紙に使った図面は、ある大手ハウスメーカー(CMも沢山やっています)が、WEB広告で使っていた間取りを私が書き直したものです。ぱっと見、かなり良さそうな間取りに見えますが、沢山の暮らしにくさが隠れています。
あとがきまで読むと、その暮らしにくさを解説していますので、読破してくださいね。
7.間取りの方程式(飯塚豊)
建築を学ぶ学生や若い設計者用に書かれた、間取りを作るための技術論です。書店で販売している間取りの本は、これくらいなので見たことある方も多いと思います。
書籍の構成やイラストまでよく練られた本で、家を建てない方も楽しめる内容です。
また、
・建物配置は、駐車場と庭の位置を配置してから決めよう。
・玄関は真ん中を基本とする。
・二階リビングのメリット ・ゾーニングや動線について
といった全体の話から、
・一階寝室の真上には、二階トイレを置かない。 (音が気になる)
・給湯器の近くに水栓を置く。 (遠いとお湯が出るのに時間がかかる)
など、細かい話まで、バランス良く語られています。
とても良い本なのですが、「施主の間取り検討に役立つか?」というと、正直、あまり役立たないと思います。元々「学生や若い設計者」のために書かれたものですから、ある程度、知識があり、設計の訓練をしていることが前提です。
以前、著者の飯塚豊さんと話したことがありますが、彼自身もそのように話していました。
また「方程式」とありますが、これを読んだからといって、素晴らしい間取りを作れるわけではありません。どちらかというと、建築家である飯塚豊さんの設計思想を楽しめる、という傾向が強いです。
とはいえ、「間取りの教養本」としては、これ以上のものはありません。間取り好きな方はぜひ、読んでみてくださいね。
8.間取りのお手本(コラボハウス)
コラボハウス一級建築士事務所がこれまでに手掛けた間取りから、厳選したものを紹介する本です。
写真も豊富で読んでいてワクワクする内容になっています。
間取りにコメントも書いてあって、暮らしがイメージしやすく家づくりの夢が膨らむ本ですね。
こういう間取り集は昔から沢山ありますが、最近ではこの本が秀逸です。
「マネしたい!が後と絶たない」
と書かれていて、確かにそうだろうな、と思います。
ただ、そのまま真似してしまうと、多くの場合、失敗するでしょうね。
コラボハウスさんに間取りを依頼するなら良いのですが、工務店やハウスメーカーに、「この間取りで!」とやってしまうと、あまり良い結果にはならないと思います。
なぜか?
間取りは、土地・敷地状況・用途地域・予算・家族構成・希望の暮らしなどが、複合的に影響して決まるものです。そのため世の中に同じ間取り、というのは、ほとんどありません。
掲載されている間取りは、それらの状況を読み解いた特殊解です。
汎用性のあるものではありません。
にも拘わらず、「この間取りが良い」
とハウスメーカーに依頼すると、全体のバランスを無視して「施主の要望を実現した」間取りになりがちです。その多くは、コラボハウスの間取りとは全く違う劣化コピーになります。
「もちろん、全部真似るわけじゃなく、部分的に真似るんですよ」
と思われかもしれませんが、これも考えモノです。
最近の間取りで人気なのは、
・キッチン横並びのダイニングテーブル
・シューズクローク
・パントリー
・広いランドリールーム
・玄関脇にある手洗い
で、『間取りのお手本』でも見かけますが、これらを、
素敵!
と思って全部乗せしても、良い間取りになることはほとんどありません。
部分的には良く見えるかもしれませんが、(間取りで暮らしてみた結果)間取り全体としては破綻している=暮らしにくい間取り となることが多いです。
また間取りは良く見えるけど、日当たりや眺望がムチャクチャ悪いといった例もあります。
大手ハウスメーカーが計画している場合でも、冬は直射日光がほとんど入らない、という間取りも普通にあります、
これは施主の要望を優先するあまり、本来は検討すべき近隣環境を無視してしまった結果です。
ここで私達が考えなければならないのは、間取り検討時に何を重視すべきか?です。
確かに今、流行っている間取りは、魅力的に見えます。
それらを採用するのは簡単ですが、いずれ「古臭く」なります。
大事なのは、
「自分達にとって、30年後も理想的な暮らしができる間取りにする」
ことです。
この目的を達成する手法の1つとして、
・キッチン横並びのダイニングテーブル
・シューズクローク
・パントリー
・広いランドリールーム
・玄関脇にある手洗い
があります。
あくまで手法なので代替手段もある、ということです。
という感じで、本書をそのまま「お手本」にすると失敗する可能性はあります。
ただ、真似した後に、間取りで暮らしてみて問題点がないかをセルフチェックするなら、良いと思います。
どんなに
「よくできた!」
と思える間取りでも、問題点は沢山、隠れているものです。
暮らしてから後悔がないように、しっかりチェックしましょうね。
余裕があれば読んでみると良い本
最後に、余裕があれば読んでみても良い本を紹介します。
9.ホントは安いエコハウス(松尾和也)
元パッシブハウスジャパン代表理事の松尾和也さんの処女作です。
松尾さんは、ブログやYoutube、専門誌でも情報発信されていますので、「エコハウス」に興味があるなら、知っているかもしれないですね。
本書では、エコハウスにまつわる誤解を正す、という構成で、まず知らなければならない基本知識を豊富なデータと共に紹介しています。
とても良い本で、私も勉強させて頂いているのですが、一般の施主が読むことは、そこまでお勧めできません。そのため「余裕があれば読んでみると良い本」とさせて頂きました。
というのも本書は2017年に執筆されているのですが、当時に比べて日本の住宅性能はかなり改善しています。樹脂サッシ(APW330)の価格も下がり、普通の工務店でも採用されるようになりました。
HEAT20 G1程度ならクリアできる会社は増えています。
会社選びさえ間違わなければ、快適な温熱環境を確保することは可能です。
そのためこの本を施主が読む必然性はありません。
逆に、このような本を読んで、「断熱重視」の工務店を選ぶことには、リスクも多いように感じます。
実は、「断熱重視」の工務店って、間取り提案力がヒドイ会社が多いんです。
(日々のコンサルティングで実感しています)
(松尾さんは違うと思いますが)性能だけは頑張るけど、それ以外は施主任せ、
というスタンスなんですね。
実際、三井ホームや住友林業などの大手ハウスメーカーと同じように、「施主のことを総合的に考えた提案ができる会社」は少数です。
近年、ハウスメーカーの断熱性能がアップしていることを考えると、「エコハウスが得意な工務店」に頼むメリットはかなり少なくなっているのように思えます。
とはいえ、勉強熱心で知的好奇心が強く、色々と学びたい!と考えている方にはお勧めできます。
また設計者であれば、必読の書であることは間違いありません。
10.【完全版】セックスレスにならない間取り(船渡亮・三上かすみ)
夫婦の営みと間取りとの関係について、以前から興味があったのですが、アンケートを行ってみると、メルマガ読者の皆さんも間取りの所為で営めない、という経験があることがわかりました。
そこで、セックスレス専門カウンセラーの三上かすみさんにお願いして、共同執筆したのが『セックスレスにならない間取り』です。
出産が家を建てるきっかけになる夫婦は多いですが、子供はいつか巣立つもの。
30~50年スパンで考えた場合、「家の主役は夫婦」と考える方が健全です。
そのため夫婦が仲良く暮らすためには、何を考えれば良いのか?について、間取りという視点から考えたのが本著になります。
間取りによって、夫婦関係がよりよくなる環境は作れますが、それだけで十分とは言えません、そのため夫婦関係の考え方について、三上かすみさんに教えて頂いています。
出版後、この本を読んで間取りを変更しました!という施主が続出、複数のメディアでも取り上げられました。
家づくりされる方には必須の本とは言えますが、ブログやメディアでも一部紹介していますので、まずそちらを読んで頂くと良いかと思います。
【ブログ】夫婦円満でセックスレスにならない間取り7つのポイント
【コミック】家のどこでセックスをする~間取りで解決!セックスレス~
【レポート】月刊TENGA第22号_一級建築士に聞く、性生活が充実する間取り
この他、かえるけんちく相談所では、様々な家づくり本を出版しています。こちらにまとめていますので、チェックしてみてくださいね。
家づくり初心者の応援企画を始めました!
最後に家づくり初心者の皆さんへの応援企画のお知らせです。
当ブログでは、読者の皆さんに「確実に家づくりに成功して頂きたい!」そんな思いからバランスよく知識や知恵を身に着けて頂ける教材をプレゼンしています。
LINE友達登録でもらえます。
しっかり学んで、充実した家づくりにしてくださいね。
特典1『ハウスメーカーが教えない!30年後も後悔しない注文住宅の作り方』(全7章の動画講座、PDFスライド)
1000人以上の間取り診断・家づくりサポートした著者が、注文住宅を建てる施主が必ず知っておくべきだと思わる知識を7章の動画講座にまとめました。
■間違うとかなりヤバイ請負契約で後悔しない7STEP
■イマイチな間取りから複数の改善案を作り間取りを比較検討する方法
■お金をかけずに外観・通風・日当たり・断熱・防犯を最適化する【窓計画改善】セミナー
といった実践的な内容です。
参加された方からは、
「注文住宅を検討するにあたり、その基礎となる考え方、注意すべきところをよく理解できました。無料で学べるのがもったいないくらいです」
「知っていると知らないとでは家づくりが全然違うものになってくると確信した。」
「順番に見て家づくりの不安がだいぶ解消されました」
といった感想を頂いております。
特典2『特別編集版 家づくりの教科書』(非売品の電子書籍)
アマゾン1位を獲得した『注文住宅の8つの難題』『はじめて家を建てる!』『間取りで暮らす技術1』の重要な部分をピックアップして、再編集した非売品の電子書籍をプレゼントします。
特典1の動画講座でカバーしきれてない内容を補足していますので、是非、読んでみてくださいね。
特典3『家づくりに役立つ公式LINE』に招待!
登録していただく公式LINEには、5種類のタブ付きリッチメニューを採用しています。動画講座や家づくり本、家づくりの流れなどのコンテンツに素早くアクセスすることが出来ます。
LINEに家づくりの情報を集約していますので、是非、ご活用くださいね。
次のURLをクリックして、友達追加後にプレゼントが自動で送信されます。