私が運営する「かえる家づくりスクール」の会員Kさんから、「工務店の申込金の返金」についてのご相談を頂きました。
最終的には解決したのですが、その流れやポイントを紹介しますね。
申込金が全額返金されない?
Kさんは、昨年12月中旬にスーモに紹介してもらったある工務店に一目ぼれ、
申込金30万円を支払い、間取りの打ち合わせをスタートしました。
(ファーストプランは無料ですが、打ち合わせを進めるには申込みが必要だったため)
申し込み時には、請負契約にならなかった場合は、実費を差し引いて全額返金する、と口頭で伝えられました。
この実費とは何を指すのか、というと、測量や地盤調査などの外注費用、と説明されています。
その後、打ち合わせを6回行いましたが、満足いく結果とはならなかったため、今年3月末に、解約したいという意志を工務店側に伝えました。この時も、 「実費発生なしのため全額返金する」と担当者から口頭で伝えられました。
ここまでは良かったのですが、5月に入ってから工務店より
「申込金後の打ち合わせに対する実費のお話をしたい」
というメールが入ります。
この時点で、今後どのように対応すれば良いか?について、Kさんからご相談をいただきました。
Kさんは、
「工務店が言う実費の詳細は現在不明ですが、私としては、上記費用が発生していないので全額返金の認識です会社側の労力が発生しているので少しでも請求したい気持ちは分かりますし、親切にしていただいた恩はありますが、支払う必要の無いものを請求されるのは府に落ちません。」
とおっしゃっているのですが、話が違うわけですから、その通りですね。
ちなみに、Kさん、この件をスーモの窓口に相談したのですが、「当事者同士で話し合ってください」との回答。
結局、スーモは集客代行業者であり、彼らにとって最も重要な客は「工務店」です。
なぜなら、請負契約時に工務店からスーモ(リクルート)に、請負金額の5パーセントのキャッシュバックがあるためです。
工務店ともめている施主なんて、スーモにとっては客ではないので(キャッシュポイントにならない)、対応はしないと考えた方が良い、ということになります。
工務店側の言い分とは?
相談後、Kさんは、どのような理由で返金が必要なのか、を工務店に問い合わせました。
その回答がこちらです。
「お申込時に、万が一他社にお決めの場合等、ご返金の旨お伝えしましたが、K様の場合、お申し込後に打合せを6回も行いました。もちろん契約前提でのお打合せですから、今回のK様のご解約は弊社にとってもかなりの損失となります。その点はご理解下さい。」
まあ工務店が大変なのはわかりますが、返金の根拠は結局「6回打ち合わせした」だけですね。
6回も打ち合わせして、満足いく結果を出せない工務店ってどうかと思うのですが、、、
工務店へ確認すべき4つのポイント
これに対して、以下の4つのポイントについて工務店に確認するようアドバイスしました。
①6回打ち合わせを行ったのが理由とのことだが、実際、何回までであれば返金対象になったのか?
②そもそも申込金を支払う時に、なぜ、その回数について説明しなかったのか?
③契約前提で考えていたが、6回も打ち合わせを行い、納得いく提案を頂けなかったのは、そちらの問題ではないのか?工務店側にも損失はあったかもしれないが、当方にとっても時間的な損失があった。
④平成22年3月4日の宇都宮地裁で、「図面作成は営業活動」であるという見解を示した判決が出ています。これは設計業務委託契約を結ぶ前に行われた図面作成業務は、営業活動である、という判断です。設計側が、黙示的に「設計業務委託契約」は結ばれていると主張していますが、契約書がないため棄却されました。今回の場合も、契約書に明示されておらず、費用については一切、説明もされておりません。返金を拒む根拠はどのようなものでしょうか?
このような内容をK様から工務店にメールしたところ、質問への回答はないまま、6月末にやっと全額返金、となりました。
こういうのはじつはよくあります。原則返金ってことにしていて、担当者もそのように思っていたけど、社長に話してみたら、
「6回も打ち合わせしているんだったら、ちょっとは実費もらってこい!」
とか言われるわけです。
ので担当者としても仕方なく、施主にそのことについて話す、ということになります。申込金30万円を返却するだけですが、その30万は他の支払に使ってしまっていたりして、資金繰りが厳しいってのもあるかもしれません。
契約書を結んでいて、返金の内容が明記してあり、かつ説明もしているなら双方不満はないはずですが、工務店が勝手に契約してくれるだろうと思って、6回の打ち合わせを行ったわけですから、施主に落ち度はないです。
もちろん、3回までは返金できますよ、とか、言われていたのであれば別です。
ですが、そうでないなら、6回も100回も同じです。
例えば、食べ放題の店で、ギャル曽根がきて、店の想定している以上に食べたとします。
それに対して、この分は店の損失だから、金を出してくれ、とは言わないですよね?
前提が食べ放題なわけだし、そうでないなら明記すべき、というわけです。
私自身も、建設会社に在籍していたころ、解約は経験していますが、最初に話した内容以外のもので請求することはありませんでした。それは当たり前のことです。ですから、堂々と、全額返金を請求して良い、ということになります。
ポイントとしては、
・返金すべき根拠はなにか?
・その根拠は説明されたか?
の2点です。また宇都宮地裁の件を事例に出すと良いかもしれないですね、あ、この施主は手ごわいかも、と思わせられるので(笑)
間取り図作成や打ち合わせを進める上で、申込金を支払う必要がある工務店が多いですが、その場合、書面で解約条件を確認した方が良いですね。
申し込み金を支払う時は、この工務店でお願いしたい!って気持ちが強いので、解約ってことまで頭は回らないのですが、実際はよくある話です。
建築家と組んでやっているような会社は特に多いので、気をつけるようにしてくださいね。
では!