まず、この数字をみてください。
A ) 1017
B ) 6434
C ) 14000
三つの数字がありますが、それぞれ何を表しているでしょうか?
建築に関わる数字です。 少し考えてみてください。
考えましたか?
では、解答です。
これらの数字はすべて、死亡者数を表しています。
A) 1017人 これは、H24年度に住宅火災によって死亡した人の数
B) 6434人 これは、阪神淡路大震災で死亡した人の数
A)B)は、それぞれ、建築の防火性、耐震性に関わる問題で、
日本の住宅は、大きな地震や火災事故があるたびに、この二つの法的規制を強化してきました。
防火性は、放火や高齢者の増加など人為的な要因が大きいので、成果が分かりにくいですが、
耐震性については、東日本大震災の状況をみても、強化されていることは実感できます。
どちらも人命に関わることですので、建築基準法によって規制することは当然と言えます。
では、 C) の14000人は、何を意味するのでしょう。
これは、1年間にヒートショックによって亡くなった人の数です。
(医学博士 高橋龍太郎氏による推計)
ヒートショックは、部屋と部屋の温度差が10度以上あるとおこるといわれており、
例えば40度のお風呂に入った後に、室温10度の脱衣室で着替えたりするようなときに、起こります。
年間1万人以上が亡くなっている、という現状に対して、建築的な予防策は可能でしょうか?
もちろん、可能です。住宅の断熱性を高めることで、劇的に減らすことは出来ます。
では、建築基準法では、断熱性に基準を設けているのでしょうか?
残念ながら、建築基準法は、断熱については、ほとんど触れておらず、 現在、最低基準の規制さえありません。
(2020年より規制開始)
毎年、火災や地震の死亡者数をはるかに上回る人々が、
命を落としているのにも関わらず、です。
しかも、火災や震災が建築的にコントロールすることが難しいのに対し、
ヒートショックを予防するために室内温度差を少なくすることは、 建築的にはそれほど難しいことではありません。
どうしてここまで放置されてきたのか?
ヒートショックで人が亡くなったとしても、建物は無傷ですし、診断書からは、
ヒートショックが原因かどうかはよくわかりません。
穿った見方をすれば、
公の場で誰かが(国交省や設計者やゼネコンや工務店などの関係者が)、
責任を追及されたり、非難されたりすることがなかったので、
見て見ぬふりをしてきた、のが実情だと思います。
冬は我慢すればいい、という「夏むね」信仰や、
快適であることに対する罪悪感、
そして建築家の断熱軽視
< その代表として国民的建築家 安藤忠雄氏の名前をあげなければなりません > なども大きいですね、
断熱は人命を関わるものである、
という認識の欠如がこのような結果を招いてきた、と言えます。
寒さに震える人には、美しく素敵な空間よりも、
まずは、暖かい快適な空間を用意すべきではないでしょうか?
では!