工務店の社長が書いた本の中でもっとも有名なのが、 松井修三さんの「いい家が欲しい」です。いい家が欲しい、のアマゾンレビューを見ると、 賛否がハッキリ分かれているのがわかりますね。
松井さんが創業したマツミハウジングは、外断熱専門の工務店なので、 内断熱については、これでもかってくらい批判しています。実はそれが読んでて、シンドイので、いい家が欲しいは、読了できませんでした。 ただ、マツミハウジングの広告ツールとして書かれた本なので、そこは仕方ないですよね。
そういう意味では、今回レビューする涼温の家も、マツミハウジングやその仲間たちの広告ツールではあります。では、読む価値はないか?
いえ、そんなことは、ありません。 この本は、換気や冷暖房、気密、湿度について、とても分かりやすく書かれています。(当然ですが) 相変わらず、外断熱以外はダメ、マツミハウジング以外はダメ的な感じはありますが(苦笑)、 松井さんも、充填断熱はキッチリ施工出来ているところがないからダメ、とおっしゃっていますが、 出来るところも、勿論ありますので、その場合については(本書では)否定していません。
わたしは外断熱も、充填断熱も、付加断熱も、設計経験がありますので、 どれが一番良いとは言えません。予算や目指す性能や間取りによって、選択します。 また、それらの家の比較は、Q値やC値や、日射なども考慮した家の燃費で比較すべきでしょう。
基本的には私は、「充填断熱派」でも、「外断熱派」でも、 「セルロースファイバー派」でもありません。 比較的、ニュートラルな視点で話せると思います。という前提のもと、レビューを始めます。
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タイトルのセンスが素晴らしい
冷暖を、涼温と言い換えるセンスが、まず素晴らしいです。 これによって、3つの効果が生まれます。
1.涼温の家では、まったく新しい体験が出来るという期待感を持たせること。
2.冷暖房という言葉を使っている工務店との差別化が出来ること。
3.使っている換気やエアコンが、「まったく新しい」ものであると、思わせること。
私自身は、この涼温の家を体験していないので、なんとも言えないのですが、 恐らく、素晴らしいものだと思います。
全熱交換器を用いて、Q値がトップランナー以上、C値も0.5以下なのであれば、 エアコンひとつでも、確かに快適なはずです。
つまり、、、独自の工夫や技術はあるのですが、 この快適さを、<いい家を作る会>以外の工務店で出来ないわけではない、 ということです。考え方は良いけれど、いまひとつデザインセンスが合わない、、、 という場合でも、快適性とデザイン性を両立できる工務店を探すことは可能です。
「エコハウスのウソ」の影響を受けている
松井さんは、東京大学准教授 前正之さんの「エコハウスのウソ」をあとがきでお勧めしています。 「涼温な家」を読んでいると、エアコンや通風に関することが納得できるものだったのですが、 恐らく、「エコハウスのウソ」の影響で理論が整理されたことによるのかな? と思いました。ちなみに「エコハウスのウソ」は、装丁とか地味ですが、 とても真っ当でわかりやすく、説得力のある本で、お勧めです。
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住宅メーカーや、他の工務店批判は真っ当
今回は、換気や気密をないがしろにしている建築会社に対して、 かなり批判をしていました。また、住宅本を書いている著者についても、 ほぼ名指しで批判しています。 そして、その批判の内容自体は、かなり真っ当な理由に思えます。
ですが、ここがポイントなのですが、 で、まともな家を作れるのは、マツミハウジングだけなんだよ、 って感じになってしまうのですが、 そこだけは、そんなことはない、と反論したくなります。
通風は考えない
基本的には、「涼温な家」で家を建てる場合には、通風は考慮しない家づくりになります。
つまり、全館空調するので、特に窓を開ける必要はない、ということです。
実際、私は2物件、涼温の家の間取り診断をしましたが、どれも開放出来る窓は最低限で、ほとんどFIX窓を多用しているのが特徴的でした。
外の空気は、花粉や排気ガス、PM2.5などで汚れているから、室内は綺麗な空気で快適に、ということで、それは筋が通っていると思います。
後は、好き嫌いの問題ですね。私は窓は開けたいなあと思うけど、そこまで気にしない人も多いですからね。
通風は必ず考慮したい、という人には向かない考え方かと思います。
気密の重要性や、全熱交換器の説明は不十分
気密や全熱交換器については書かれていますが、説明は不十分です。 これは推測ですが、詳しく説明をしてしまうと、 「涼温の家」だけじゃなくて、他でもできちゃうの? って思うようになってしまうからかな? ってことだろうと思います。
↓換気の重要性を訴える動画。
結論としては、、、
松井修三さんや、マツミハウジングに興味がある人には、もちろんお勧めできる本です。 また、換気や冷暖房についての、大まかな内容を知りたい場合にも、良いですね、 ただ、後者の場合は、「エコハウスのウソ」を読んだ方が学びが大きいです。 ついでに、「図解 エコハウス」も合わせて読むと完璧。
ん、、、じゃ、結局、松井さんに興味なければ買わなくてよいことに(苦笑) 「マツミハウジング」の広告だけでなく、 もう少し、一般化した内容で書いてもらえると、色々な人にお勧めできるのにな、、、残念!
マツミハウジングはこちらの記事でレビューしています。
補足として、、、
気密に関しては、こちらを読んでいただけると、理解できます。中気密が良い、、、とかいう議論がいかにピントがずれているかがわかります。
こちらは、熱交換器についての記事です。
ナイチンゲールが教えてくれる住宅に熱交換器が必要な本当の理由
では!
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