間取りのセカンドオピニオンで一級建築士の船渡亮(ふなとあきら)です。
本日のテーマは
「イマドキの収納計画の失敗事例3選」
です。
注文住宅で、
収納を沢山欲しい!
というのは、必ず入る要望です。
確かにマンションやアパート住まいの場合、収納不足であることがほとんどなので、そのように要望するのも無理はないです。
ですから、「収納計画の失敗」と聞くと、
「収納不足が原因で、部屋が片付かない」
ということを想像しがちですが、「失敗」というのは、それだけではありません。
・収納は十分だけど、散らかってしまう
・床面積あたりの収納効率が悪すぎる
・収納のせいで、希望の部屋が確保できない
といったことが起こる場合もあります。
収納の問題点を見つけるポイントになるのは、「動線」です。
計画中の間取りがある方は、手元に置いて、一緒にお読みください。
本記事は、YouTubeチャンネル「アキラ先生の住まい間取り教室」をテキスト化したものです。動画版はこちらから視聴できます。
YouTubeは、週3回更新していますので、合わせてご視聴ください。
非効率で使いにくいウォークスルー・クローゼット
1つ目は、ウォークスルー・クローゼットを採用している木村さんです。
2方向からアクセスできるので、「動線が良くなる」として紹介されることが多く、
公務員夫婦の木村さんの間取りでもキッチン背面に「ウォークスルー・クローゼット」を採用しています。
パントリーとキッチンの両方から使えて便利そうですが、収納効率が悪く、家族の洋服を全ていれることができません。
木村さん夫婦の洋服を収納するには、5mのクローゼットが必要ですが、この間取りでは、右の押し入れ部分を除くと、半分の2.6mしか確保出来ていませんでした。
また主寝室に布団を敷いて家族4人で就寝の予定ですが、布団の収納場所がWIC内のため片付けが面倒です。
毎朝、主寝室を出て、ウォークスルー・クローゼットに布団を運ぶのは、超面倒ですから、布団は敷きっぱなしになりそうです。
床面積に制限があって、収納が不足しているのであれば、仕方ないのですが、この場合は違います。単純に床面積あたりの収納効率が悪いのが原因です。
収納効率については、ウォークスルー・クローゼット内を、「収納」と「動線・廊下」で色分けすることでわかります。
「動線・廊下」の面積が、「収納」の面積よりも多い場合は、収納効率はイマイチです。
このウォークスルー・クローゼットは、半分以上が「動線・廊下」で占められていました。
こりゃ、、、ダメですね。
これらの「問題」は、ウォークスルーをやめることで改善しました。
まずコの字のハンガーパイプにすることで、6m以上のクローゼット収納を確保します。
今の住まいのハンガーパイプの長さが5mなので、家族全員の洋服を収納できます。
さらに、主寝室側から使える押入れも確保しました。
これなら、毎朝、布団を仕舞うのも苦ではないです。
全てを収納にするのではなく、着替えるための空間も残しています。
この部分で部屋着に着替えることが出来ます。
必要な収納量を確保出来ているなら、必ずしも「ウォークスルー・クローゼット」がダメ、ということではないです。
「ウォークスルー」になることで、動線が大幅に改善することもあります。
ただ、そういう選択が出来るのは、「必要な収納量を確保している」ことが大前提です。
また、今回は、「ウォークスルー・クローゼット」にする意味がほぼありませんでした。
動線が大幅に良くなる、ということがないんですね。
このような状況で、「ウォークスルー・クローゼット」に囚われてしまうと、非合理な間取りになってしまいます。
一般に「動線」と「収納」はトレードオフの関係にありますので、まずは「必要収納量」を確保した上で、動線を最適化していくのが良い間取りへの近道です。
パントリーがあるのに片付かないキッチン
2つ目は、大容量のパントリーを計画している山中さんです。
共働きやテレワークの増加、災害時の備えとして、以前よりも食料品の収納場所が必要になっています。
また冷凍食品などをストックするためのセカンド冷蔵庫もあると便利です。
自営業の山中さんも、キッチン背面に大容量のパントリーを配置する間取りを検討していました。
キッチン近くにこれだけの収納量が確保できるのは理想的に見えますが、実はこのままだと、片付かないキッチンになる可能性があります。
この間取りの「暮らしにくさ」は、キッチン背面の収納量とパントリーへの動線に原因があります。
人は、遠くの収納より近くの収納を使いたいと考える傾向にあります。
つまり自分に近ければ近いほど収納としての価値が高いのです。
今、使っているキッチンを見ると一目瞭然かもしれません。
キッチンカウンター上には、調味料や油、洗剤など様々なものが置かれていませんか?
これらは多くの場合、
「収納場所がないのでやむを得ず」
ではなく、単に「近くて使いやすい」という理由で、キッチン上に置かれているはずです。
このようにキッチンから手が届く範囲の収納はとても貴重ですが、この間取りの場合、
パントリーへの動線確保のため、本来収納として使える幅90cmのスペースが、動線で潰れています。
そのため、背面収納は1.8mしかありません。
4人家族の場合、キッチンの背面収納は2.7m程度欲しいですが、この間取りは、その3分の2です。
使う人の性格や家族構成にもよりますが、
これではキッチン近くの収納が不足するので、キッチン廻りは散らかってしまいそうです。
そのため、間取り全体を見直して、キッチンとパントリーを一直線に並べました。
キッチンを90度回転し、背面に2.7mの収納を確保しました。
そしてキッチン通路の延長線上にパントリーを一直線に配置しています。
キッチン通路の延長線上にパントリーを配置するのは、
「理想的なパントリーの型」
です。
大容量パントリーが欲しい場合に当てはめてみると良いですね。
ちなみに、ここまでの収納量が必要ない場合は、コンロの南側にパントリーを確保しても良いです。
『この間取り、ここが問題です!』の事例08で紹介した石井さんは、キッチンの南側にパントリーを設けています。
また、「ウォークスルークローゼットの木村さん」も、動線をなくすことで、キッチン収納を増やしています。
キッチン廻り収納がより充実しています。
キッチンから手が届く収納、だいたい1m程度にある収納は、とても貴重です。
それがなくなる「動線」は、問題アリなので、改善を検討した方が良いですね。
シューズクロークのために、○○を諦める?
3つ目は、収納に余裕がある間取りに潜む
「盲点」
について解説します。
ITコンサルタントの松岡さんは、南側に公園がある敷地に、薪ストーブのある戸建て住宅を計画しています。
眺望の良さを活かした間取りで、この図のように、収納も多いため基本的には満足はしていましたが、1点、リビングに隣接する和室がない事が不満でした。
確かにこの間取りを眺めると、和室を配置する余裕がないように見えます。住宅会社と打合せしても良い案が出てこないので、松岡さんも半分、諦めていました。
ただ、私が間取りのコンサルティングを行った結果、松岡さん夫婦は、
「あまりモノを所有しないようにしている」
ことがわかりました。
実際のモノの量もお聞きした上で、再度、間取りを眺めると、収納や間取りに無駄が多いことに気付きました。
特にこちらの3か所
・シューズクローク
・WIC
・脱衣室
は、もう少し小さくすることが出来そうです。
シューズクロークは、動線になっている部分を色付けすると、かなり無駄があることがわかりました。
松岡さん自身も、それほど「シューズクロークが欲しい!」と考えていたわけではありませんでした。
そこで、この3つをリストラし、
・シューズクローク
・WIC
・脱衣室
さらに、動線計画も再検討することで、このような間取りにしました。
松岡さんの希望だった和室を、家の中心に配置し、回遊動線を取り入れた間取りです。
キッチン・パントリー・洗面室・脱衣室・浴室を一直線に並べて、家事効率を高め、家族の様子もわかるようにしました。
和室は子供の遊び場として使える他、水廻りに近いことから家事スペースとしても利用できます。
シューズクロークは中止し、WICも小さくしましたが、松岡さん夫婦にとって必要な収納量は確保しています。
昨年、完成した松岡さんの家に伺いましたが、2年間暮らしてみて収納が少ないと思うことは全くないとのことでした。
住宅会社と考えた間取りには、和室以外にも問題が多いことが判明したので、
「間取り診断を受けなかったらと思うとゾッとする」
とも話されていました。
家づくり中は、間取りを客観的に見れないので、その問題点には気づきにくいものです。
間取り診断を受ければ、問題点を認識できるため、それらを改善することで、ワンランク上の間取りを手に入れることが出来ます。
まとめ
以上、「イマドキの収納計画の失敗事例3選」でした。
①非効率で使いにくいウォークスルー・クローゼット
②パントリーがあるのに片付かないキッチン
③シューズクロークのために、○○を諦める?
私の記事やチャンネルでは、「動線」について話す機会が多いのですが、動線の考え方については、こちらの動画のSTEP4で話しています。参考にしてみてください。
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