間取りのセカンドオピニオンで一級建築士の船渡亮(ふなとあきら)です。
本日のテーマは
「お金をかけない防犯対策」です。
最近、物騒になったよね。
っていうのは、いつの時代でも使われる言葉です。
インターネットやSNSで、情報は拡散しやすい現代では、
このようなネガティブな話題で溢れています。
実際、警視庁が2023年に実施した「治安に関するアンケート調査」によると、この10年で「治安が悪くなった」と感じる人は71.9%となっています。
7割の人が、治安が悪くなっている、と感じているのですが、実際の犯罪件数は、2002年をピークに減り続けています。
「体感の治安は悪化してるけど、犯罪件数は減少している」
これは、防犯に興味がある人にとっては、常識だったのですが、状況が変わりつつあります。
犯罪の認知件数が、2021年(令和3年)に戦後最小記録した後、2022年(令和4年)に増加に転じました。
そして、昨年2023年(令和5年)も増加しています。
このグラフを見ると、トレンドが変わりつつあるように見えますね。
このグラフは、街頭犯罪や侵入犯罪などを合算したものですが、家づくりで関係するのは、空き巣狙いなどの「侵入犯罪」です。
この「侵入犯罪」の件数も、ルフィを名乗る広域強盗団の存在が世間を震撼させた2023年から増加に転じています。
ピークだった2002年から見れば、犯罪件数はかなり少なくなっていますが、注文住宅を建てる場合、長期スパンで考える必要があります。
このまま犯罪件数が増え続けると、10年、20年後、日本は「安全な国」でなくなっている可能性もあります。
あまり悲観する必要もないのですが、
「お金をかけない防犯対策」
なら、知っておいても損はないです。
今回、解説するのは、採用しやすい防犯対策ばかりなので、間取り確定前の人は、取り入れてみてくださいね。
本記事は、YouTubeチャンネル「アキラ先生の住まい間取り教室」をテキスト化したものです。動画版はこちらから視聴できます。
YouTubeは、週3回更新していますので、合わせてご視聴ください。
防犯の基本
まず防犯の基本から話しますね。
こちらの図を見てください。
防犯対策すべき開口部を図にしたものです。
防犯の最後の砦が、窓やドアなどの開口部です。
窓から侵入できなければ、空き巣狙いなどの被害を防ぐことが出来ます。
図で書くと難しそうですが、考え方はシンプルです。
とりあえず、以下の3つを抑えてください。
①地面から高さ2m以内の窓は、防犯必要
②バルコニーや庇から高さ2m以内の窓は、防犯必要
③以下が通らない窓は、防犯対策不要
400mm×250mmの長方形
400mm×300mmの楕円形
直径300mmの円
この3つが基本になるのですが、これだけ聞いても
「じゃあ、どうすれば良いの?」
ってことになるので、実践しやすいように噛み砕いて、7つのポイントとして解説しました。
では、早速話していきます。
①開口部を減らす
1つ目は、開口部を減らす です。
日本の住宅の特徴は、とにかく「開口部が多い」ことです。
特に引き違い窓は沢山使われる傾向にありますが、当然、防犯上のリスクになります。そこで意識して欲しいことが、「開口部を減らす」ことです。
「開口部(窓)をなくす=壁にする」のは、
「最も強力」で
「絶対的」で
「お金がかからない」
なんなら
「コストダウンもできてしまう」
最強の防犯対策といえます。
そして開口部を減らすのは、リフォームでは面倒なので、新築時だからこそ、出来るものです。
また窓をなくせば、それだけで断熱性能もアップしますので(窓は最も熱が逃げる部位)、温熱環境的なメリットもありますし、光熱費も安く済ますことが出来ます。
まあ、このように話してしまうと、無理やり窓を減らして、牢獄のような部屋を計画する人もいるので、バランスは大事なのですが、
一般的なマンションと比較して、戸建て住宅は窓の数が多くなりがちです。
不要な窓はないか?という視点でチェックしてみると良いですね。
② 窓をFIXにする
2つ目は、窓をFIXにする、です。
FIXにする、というのは、嵌め殺し窓にする、ということです。
窓をFIXにするのは、窓をなくすのと同じくらい有効な防犯対策です。
なぜなら、FIXの窓を破壊して、家に侵入することは、事実上、不可能だからです。
そのため、「換気・通風」が必要がない窓は、FIXにすれば安心です。
今の住宅は、24時間機械換気が基本となるため、トイレ・洗面・浴室といった水廻りの換気は、全て換気扇で行います。
特にトイレは、窓を開ける機会が稀になるはずなので(掃除の時くらい)、FIXでそれほど問題ありません。
「でも、掃除の時はどうするの?外側は掃除しにくいよね?」
と思われるかもしれませんが、窓ガラスを型ガラス(カスミ)にすれば、外のガラス汚れは認識しにくいです。
私のようなズボラな性格の人に限るかもしれませんが、窓掃除しなくても、ほとんど気にならないと思います。
例えばこちらのような間取りの場合、トイレとリビングの西側の窓は、FIX窓にしても、さほど支障はありません。
リビングの風通しを気にされる方もいるかもしれませんが、
通風は、2か所窓があれば問題ありません。
南側の掃き出し窓から、キッチンの小窓に向かって風は通ります。
③ 1階床から1.5m以上の高窓にする
3つ目は、「床から1.5m以上の高窓にする」です。
防犯も、「暮らし」に落とし込んだ上で、検討するようにしてくださいね。
窓は欲しいし、換気・通風もしたい、という場合には、高窓が有効です。
先ほどの図では、地面から2Mの高さまでは防犯対策すべき、ということでしたが、これはつまり2mを超える高さの窓は、防犯対策が不要ということです。
地面から2mを超える、というのは、1階床面から1.5m以上の高さがあればクリアできます。
実際、ヘーベルハウスが行った自社オーナーの被害調査でも、地面から2mを超える高さの窓の被害はかなり少ないことが分かっています。
床面から1.5m以上に設置する窓として適しているのは、横滑り窓です。
こちらの事例のようにテレビ上に設置することも多いですね。
注意すべき点が2つあります。
1つ目は、窓の開閉のしやすさです。
デザインの関係で、横滑り窓を天井近くに設置すると、開閉のために踏み台が必要になったり、オペレーターを設置する必要が出てきます。
費用もかかるため、窓の開閉に、強いこだわりがない場合は、FIX窓にした方が無難です。
2つ目は、外にある足掛かりです。
エアコンやエコキュートなどの室外機や、
貯湯タンク、
物置やカーポート
などがあると、そこが足掛かりとなり、侵入できてしまいます。
足掛かりがある場合は、その上端から2m以内であれば侵入できるので、高窓の防犯効果が薄れます。
間取り確定の最終段階で防犯チェックする場合には、室外機や物置などを配置図・平面図・立面図に書き込んだ上で高さの確認を行うようにしましょう。
④ 小窓にする
4つ目は、小窓にする です。
低い位置に設置する場合でも、人が侵入できない大きさの窓であれば防犯上、問題はありません。具体的には、以下が通らない窓となります。
400mm×250mmの長方形
400mm×300mmの楕円形
直径300mmの円
じゃあ、実際にどの大きさの窓を選べばよいでしょうか。
YKKAPのAPW330という窓の場合は、こちらの大きさになります。
■たてすべり出し窓
サイズ呼称 幅036以下
■すべり出し窓(横滑り出し窓)
サイズ呼称 高さ03以下
建築に詳しい方の場合、たて滑り出しのサイズ呼称幅036だと「400mm×250mmの長方形」が入るのでは?と思われるかもしれません。
ただ、たて滑り出しのサッシが開いた状態を考えると、有効寸法は、218mmしかないので、250mm幅は入らないことがわかります。
また前述のヘーベルが行った調査でも、小窓からの侵入事例はかなり低いです。
このように侵入は難しいので、侵入できない窓としています。
■たてすべり出し窓
サイズ呼称 幅036以下
■すべり出し窓(横滑り出し窓)
サイズ呼称 高さ03以下
であれば、侵入できないと考えて良いです。
⑤ シャッター・面格子(標準仕様の場合)
5つ目は、シャッター・面格子です。
検討している住宅会社で、シャッターや面格子が標準仕様の場合、とても幸運です。
是非、それらを採用するようにしてください。
特にシャッターは、シャッターが閉まってさえいれば、防犯効果は、「防犯ガラス」よりもずっと高いです。
標準で設置できる数は決まっていると思いますので、特に侵入されやすい1階の掃き出し窓・腰窓で、優先的に設置しましょう。
面格子も防犯効果が高く、引き違いや上下窓との相性が良いので、外観に影響のない部位なら採用しても良いと思います。
「外観に影響のない部位」
としたのは、目立つ位置に「普通の面格子」を設置するのは、
「超絶カッコワルイ」
からです。
特にファサード(一般に道路から見える面)には、普通の面格子は設置しないようにしないでください。
どうしても面格子を設置したい場合は、費用はかかりますが、木製面格子やアイアン面格子などデザイン性の高いものなら、良いと思います。
お金をかけない「窓の防犯対策」は以上です。
ここからは、敷地内に侵入させない・侵入盗のターゲットにならないための対策を2つ紹介します。
この2つは、「ルフィ」のような組織的な犯行グループが、富裕層を狙う場合は、あまり効果は期待できないかもしれません。
何しろ覆面して防犯カメラも無視してしまうくらいですからんね。
ただ、現状では、組織的な犯行グループのターゲットになるのは、建築費1億以上だと思われる豪邸です。
私たち、庶民の家の場合は、効果があると思われますので試してみてください。
⑥ ドアフォンは、道路際に設置する
6つ目は、「ドアフォンは道路際に設置する」です。
ドアフォンは、ほとんどの住宅で標準仕様に含まれていると思いますが、その設置位置が重要になります。
こちらの配置図を見てください。
この方の場合、ドアフォンの設置場所として、AとBという候補がありますが、Aの方が「防犯性が高い」ということなります。
これはすごく簡単な話で、Bにしてしまうと、そこまでは自由に侵入できてしまいます。
他人の敷地には、ドアフォンで相手に要件を伝えてから入るのがマナーですよね。
ただそのドアフォンが、Bのように、敷地内や、玄関ドア脇に設置されているのであれば、そこまでは
「誰でも自由に侵入できる」
ということになります。
空き巣狙いにとって、敷地内に入れると、そこから建物内への侵入しやすいですし、事前調査もできます。
最終的には、「建物内に侵入出来なければOK」ですが、その手前で「敷地に侵入させない」というの事も重要です。
ドアフォンは、門扉や機能門柱に設置すると思います。
防犯を重視するのであれば、なるべく道路際に設置した方が良いですね。
⑦ 夜に照明点灯
7つ目は、「夜に照明点灯」です。
空き巣狙いは、留守中の家を狙います。
外から家の様子をみてスクリーニング(つまり、ふるいにかけて)、留守だと思われる家に狙いを定めます。
このスクリーニングにかからないようにするために、外からみて「在宅である」ように見せることが効果的です。
特に夜は、照明を点灯するのが分かりやすいのですが、シャッターを閉めている部屋の場合は、明かりを外に漏らすことができません。
そこで道路から見える位置に小窓を設けて、近くにタイマー付き照明を設置する、という方法が効果的です。
「タイマー付き照明」は、検索すると様々な商品が出てきます。
どれも比較的簡単に採用できると思いますので、窓や外構、照明計画時に参考にしてください。
最後に1つ、「防犯対策」や、家づくり全般に対しての注意事項なのですが、絶対に忘れないで頂きたいのが、
「フォーカシングイリュージョンに惑わされない」
ことです。
「フォーカシングイリュージョン」って聞きになれない言葉だと思いますが、
要は、1つのことに注目して、実際以上の価値を感じてしまうことを言います。
今回のような話を聞いて、
「これからは防犯が重要だ!怖いから空き巣狙いのリスクをなくせる窓にしよう!」
となり、防犯対策が最重要になってしまい、
「防犯だけ考えて、窓計画する」
という方が、一定数、いらっしゃると思います。
よく間取り診断で目にするのが、高窓にした上で、面格子も設置する、という、牢獄のような子供部屋です。
確かに子供部屋の安全は大事です。
ただ、やりすぎ感は半端ないですし、火災の救出などは、この窓では難しいです。
空き巣狙いより、火災の方がよっぽど怖いですからね。
全てのことに言えますが、防犯対策は、間取り検討の1つの要素でしかありません。
私たちが注文住宅を建てる目的は、「理想の暮らしを実現する」ことのはずです。
まとめ
以上、「お金をかけない防犯対策7選」でした。
まとめたのがこちらです。
① 開口部を減らす
② 窓をFIXにする
③ 1階床から1.5m以上の高窓にする
④ 小窓にする
⑤ シャッター・面格子(標準仕様の場合)
⑥ ドアフォンは、道路際に設置する
⑦ 夜に照明点灯
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