間取りのセカンドオピニオンで一級建築士の船渡亮(ふなとあきら)です。これまで3,500件以上の間取り診断をしてきました。
この記事では、間取り診断でよく見かける「失敗する流行間取り」を3つ取り上げます。シューズクローク・玄関手洗い・ランドリールームです。
どれも便利な間取りですが、配置や大きさを間違えると、使われない部屋や暮らしにくい間取りになります。「流行っているから採用する」のではなく、自分たちの暮らしに合うかで判断することが大切です。
この記事でわかること
- 流行間取りが生まれた背景
- シューズクロークを採用するときの3つのチェック
- 玄関手洗いを採用するときの3つのチェック
- ランドリールームを採用するときの3つのチェック
この記事は、YouTubeチャンネル「アキラ先生の住まいの間取り教室」の動画をもとにしています。図面の動きを動画で見たい方は、こちらもどうぞ。
流行間取りとは?10年ごとに変わる間取りのはやり

間取りには、時代に合わせて10年くらいの周期で流行があります。たとえば1990年代は、玄関の上の吹抜けや、玄関の正面に階段を大きく見せる間取りが流行りました。今はあまり見かけず、少し古い印象になることもあります。
2000年代からは家事動線が意識されるようになり、キッチンの横に洗面脱衣室を置いて、料理をしながら洗濯する間取りが増えました。共働きの家庭が増え、「家事の時短」が求められるようになったからです。
国の統計では、1990年代の後半から共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、今では2倍以上になっています(労働政策研究・研修機構「専業主婦世帯と共働き世帯」)。
私が結婚したのもこの頃で、共働きだったため、洗濯と掃除は私の担当でした。友人に「毎日、洗濯している」と話すと驚かれたり、同情されたりしたものです。そういう時代だったということですね。
最近の流行は、次のとおりです。
- 2010年ごろから:シューズクローク
- 2015年ごろから:ランドリールーム、キッチン横並びダイニング、パントリー
- 2020年ごろから:コロナ禍をきっかけにした玄関手洗い
どれも時代の変化に合わせた間取りですが、服と違って家は試着ができません。住んだことのない間取りを採用するときほど、慎重に検討する必要があります。
キッチン横並びダイニングとパントリーは、第2弾のキッチン横並びダイニングとパントリーの失敗例で図面つきで解説しています。
流行間取り1:シューズクローク

シューズクロークは、玄関の横に作る納戸のような収納です(ハウスメーカーによっては「エントランスクローク」とも呼びます)。玄関をきれいに保つ目的で、2010年ごろから流行しはじめました。
いくつかのタイプがありますが、今回は家族専用の玄関(内玄関)として使うタイプを取り上げます。家族がシューズクロークから出入りすれば、表の玄関はいつも片付いた状態を保てる、という考え方です。
通販の箱、自転車のヘルメット、子どもの外遊びの道具など、玄関に置きたいモノは年々増えています。私が行ったアンケートでも、79%の方が「シューズクローク・土間収納を採用したい」と答えていました。
理想のシューズクロークは「帰宅動線の最短ルート」にある

こちらは、私が2014年に監修した片付けの本『人生が変わる片付けのルール』で提案した「理想の玄関」です。家族はシューズクロークで靴を脱ぎ、コートを掛け、洗面所で手を洗ってからリビングへ入ります。

買い物をしてきたときは、そのままキッチンで食材をしまえます。とても自然な帰宅動線です。

お客様は表の玄関から入ります。家族の靴が出ていないので、いつ来客があっても困りません。きれいな玄関は、毎日の気分も良くしてくれます。
ただ、本を読んだ友人からは「こんな大きな玄関、作れないよ!」と言われました。そのとおりですが、これくらいの余裕がないと、シューズクロークのある玄関は成立しないのも事実です。
失敗例:遠回りで幅60cmのシューズクローク

Nさんの間取りでは、玄関からシューズクロークに入って靴を脱ぎ、ホールに戻ります。理想形と同じように見えますが、大きな問題が2つあります。

1つ目は、シューズクロークを通ると遠回りになることです。少しでも近道をしたい、楽をしたいのは人間の本能です。わざわざ遠回りする動線は、続きません。
新築のうちは家族でルールを守っても、そのうち「来客も少ないのに、なぜシューズクロークを通るんだろう?」と感じるようになるかもしれません。理想形では、帰宅動線上にコート掛け・洗面・キッチンがあるので、通るのが一番の近道になっています。

2つ目が一番の問題で、シューズクロークの幅が60cmしかないことです。単身者用アパートの玄関よりも狭い幅です。シューズクロークがモノであふれていては、表の玄関がきれいでも本末転倒です。
表の玄関は戸建ての標準的な120cmです。これなら、家族も表の玄関を使うでしょう。60cmは極端な例ですが、一般的にも80cm(廊下と同じくらい)で計画されることが多く、マンションの玄関と変わらない狭さになりがちです。
改善案:シューズクロークをやめて、玄関を168cmに広げる

Nさんの間取りは、シューズクロークをやめて壁面収納にし、玄関の幅を168cmに広げました。収納量は変えずに、2人が同時に靴を脱ぎ履きできる広さです。
家族の靴は見えますが、玄関が広いので散らかった印象にはなりにくいはずです。Nさんの事例から分かるのは、「遠回りで狭いシューズクロークなら、採用しない方が良い」ということです。
理想形を中途半端にまねない

では、理想形をまねれば良いかというと、中途半端にまねるのはおすすめしません。本を見てこの形をまねた方の間取りを診断したところ、帰宅動線がとても遠回りになっていました。この間取りは、最初から考え直しました。
理想形をそのまま再現するには、6畳以上の床面積が必要です。玄関に面積を使いすぎて、リビングなどが狭くなることもあります。
| シューズクロークのチェック | 見るところ |
|---|---|
| ①帰宅動線 | シューズクロークを通るのが、ほかのルートより近道か |
| ②幅 | 今の住まいの玄関より広いか(80cm以下は要注意) |
| ③面積 | 玄関に床面積を使いすぎて、リビングが狭くなっていないか |
アキラ先生シューズクロークは「あれば便利」ではなく、通るのが一番楽な場所にあるかで判断しましょう。問題があれば、シューズクロークをやめるのも立派な選択です。
シューズクロークの寸法や使いやすい形は、シューズクロークの間取り|理想の5つのポイントで詳しく解説しています。
流行間取り2:玄関手洗い


2つ目は、コロナ禍をきっかけに注目された玄関手洗いです。先ほどの理想の玄関も、シューズクロークの先に洗面化粧台があるので、玄関手洗いの一つと言えます。このような間取りなら問題ありません。
問題なのは、「とりあえず玄関に手洗いを付けてみた」という間取りです。
失敗例:玄関を開けると、正面に洗面台


講談社の拙著『この間取り、ここが問題です!』の事例22で紹介した吉岡さんの間取りです。広い玄関の一角に洗面化粧台があり、ドアや壁に触れる前に手を洗えるので、感染症対策としてはとても優秀です。


ただ、デザインはどうでしょうか。洗面台は生活感のかたまりです。玄関に入って最初に目に入るのが洗面台では、注文住宅としては残念です。


吉岡さんには、おばあ様の形見のステンドグラスを玄関に飾りたいという希望がありました。この間取りでは、洗面台のすぐ横にステンドグラスが並びます。せっかくのステンドグラスが台無しです。
コロナ禍には、「玄関正面に手洗い」の間取りがたくさん作られました。私が診断した方にも、同じような計画が何件もありました。
改善案:同じホールの中で、玄関から見えない位置へ


吉岡さんの間取りは、洗面台を同じ玄関ホールの中に残しつつ、玄関から見えない位置へ移しました。玄関を開けると、正面にステンドグラスだけが見えます。手洗いのしやすさもそのままです。


完成後にご自宅に伺うと、実物のステンドグラスはとても素敵でした。吉岡さんは「このステンドグラスの横に洗面台が置かれていたかもしれないと思うと、ゾッとします」と話されていました。完成した家は完成事例紹介09:ウィザースホームで建てたステンドグラスの家で写真つきで紹介しています。
失敗例:数歩先に洗面台があるのに、玄関手洗いも作る


こちらは、玄関手洗いから数歩先に洗面化粧台がある間取りです。冷静に考えると、この手洗いは無くても困りません。


「家族の入浴中に洗面が使えない」という声もありますが、洗面台と脱衣・洗濯機の間をロールスクリーンで仕切れば解決します。
そもそも、今の暮らしで、帰宅後すぐに手を洗っているかも確認してみてください。買い物の荷物を置いて、コートを脱いでから手を洗う方は多いはずです。その場合、玄関の近くに手洗いがあってもあまり使われません。
| 玄関手洗いのチェック | 見るところ |
|---|---|
| ①見え方 | 玄関を開けたときに、正面に見えない位置か |
| ②代わりになる洗面 | 帰宅動線の近くの洗面台で代用できないか |
| ③自分たちの動き | 帰宅後の行動の順番に合った位置か |



玄関手洗いの目的は、帰宅後すぐに手を洗うことです。「玄関手洗いありき」で、玄関の見え方や洗面の数を決めていないか見直してみましょう。
流行間取り3:ランドリールーム


3つ目はランドリールームです。共働きの増加や花粉・黄砂の影響で、洗濯物を部屋干しや乾燥機で乾かしたい方が増えています。物干しスペース・乾燥機・スロップシンクをそろえたランドリールームは、とても人気です。
ただ、シューズクロークや玄関手洗いが玄関まわりで完結するのに対して、ランドリールームは、それだけでは洗濯が完結しません。ほかの部屋との関係を考えないと、作ったのに家事が楽にならない、ということになります。
失敗例:洗濯物をしまうWICが、階段の上にある


2階リビングで検討していたMさんの間取りです。1階に3畳のランドリールームがあり、部屋干しのスペースもあります。問題は、洗濯物をしまうWICまでの動線が長いことです。
洗濯は「洗う → 干す(乾かす) → 取り込む → たたむ → 仕分ける → しまう」までやって終わりです。この間取りでは、取り込むまでは楽でも、たたんでしまうまでが大変です。WICがランドリールームの真上にあり、階段を往復することになります。


もう一つの問題は、リビングから遠いことです。洗濯中は家族と離れてしまい、家事をしている姿も家族に見えません。子どもの様子を見ながら洗濯できないので、子どもが寝てから洗濯することになり、自分の時間が削られます。
インテリアコーディネーターの友人も、同じような離れたランドリールームを作り、「洗濯の時間が一番、嫌」と話していました。
改善案:洗面・ランドリー・ファミリークローゼットを2階に並べる


改善案では、2階の北側に、洗面・ランドリールーム・ファミリークローゼットを並べました。乾いた洗濯物はカウンターでたたんで仕分け、となりのファミリークローゼットにすぐしまえます。


LDKのとなりなので、子どもが起きている間に洗濯を済ませられます。ワンオペで家事と育児をするときにも対応しやすい形です。
ランドリールームは半分の広さになりましたが、乾燥機を中心に使い、一部だけ部屋干しする計画にしました。ガス乾燥機やドラム式を使っている方に聞くと、ほとんど乾燥機で済ませるという声が多いです。
ファミリークローゼットが脱衣室と同じ空間だと湿気が気になるかもしれませんが、換気の計画をしっかりして、空気が動くようにすれば問題ありません。
失敗例:ランドリールームを、家族の帰宅動線にしてしまう


こちらは、『この間取り、ここが問題です!』の事例01で紹介した木村さんの間取りです。ランドリールームとファミリークローゼットが並び、洗濯の動線はとても短いです。
ところが間取り全体で見ると、家族の帰宅動線がランドリールームの中を通っています。ランドリールームには、天井から濡れた洗濯物が干してあります。疲れて帰ってきて、洗濯物の下をくぐって家に入るのは、私なら嫌です。


さらに、夜中にトイレへ行くときもランドリールームを往復します。家族の入浴中は通れないという問題もあります。このような間取りを提案する設計者は意外と多く、よく見かけます。
改善案:ランドリールームを動線から外す


改善案では、ランドリールームを動線から外し、洗面所を通ってキッチンへ入る形にしました。帰宅動線が短くシンプルになり、家事の時短にもなります。ファミリークローゼットまでの距離は少し伸びましたが、問題のない範囲です。
| ランドリールームのチェック | 見るところ |
|---|---|
| ①配置 | 干す・たたむ・しまうが近くで完結するか |
| ②家族との距離 | リビングから離れて、孤立していないか |
| ③動線 | 帰宅やトイレの動線の途中にしていないか |



ランドリールームは「部屋の広さ」より、たたんでしまうまでの動線が大事です。洗濯動線の良い例は、30坪で家事動線の良い間取りも参考にしてください。
まとめ:流行間取りは「暮らし方に合うか」で選ぶ


| 流行間取り | 採用前に確かめること |
|---|---|
| シューズクローク | 通るのが一番の近道か。幅は今の玄関より広いか。玄関に面積を使いすぎていないか |
| 玄関手洗い | 玄関の正面に見えないか。近くの洗面台で代用できないか。帰宅後の動きに合うか |
| ランドリールーム | たたむ・しまうまで近くで完結するか。リビングから孤立していないか。動線の途中にしていないか |
3つとも「採用しない方が良い」間取りではありません。採用するときに、自分たちの暮らしに合っているかを確かめることが大切です。
施主に必要なのは、間取りの良し悪しを見分ける力、いわば「間取りの目利き」になることです。よくある後悔のパターンは間取りで後悔する13のポイントに、リビングの失敗例は間取り診断で見かける「ダメなリビング」5選にまとめています。
間取りで後悔しないために
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