あなたのキッチンは多数派?少数派?
こんにちは。間取りのセカンドオピニオンで一級建築士の船渡亮(アキラ先生)です。これまで3,500件以上の間取り診断をしてきました。
キッチンの間取りや設備は、悩む方がとても多いところです。特に今、賃貸マンションやアパートに住んでいる子育て世代の方には、どんなキッチンが暮らしやすいのかイメージしにくいと思います。
「注文住宅なんだから好きなものを選べばいい」という意見もあります。ただ、多くの人が選ぶものには、選ばれるだけの理由があります。そこで、家づくり中の施主631人にご協力いただき、採用したいキッチンの間取り・設備をランキングにしました。

この記事では、順位だけでなくどんな人が選んでいるのかと、採用する前に確かめたい注意点を、実際の間取り診断の図面とあわせて解説します。
13位〜11位:L型・II型・壁付けキッチン
13位:L型キッチン
L型キッチンは、コーナーをはさんでシンクとコンロをL字に配置したキッチンです。カウンターが広く調理スペースを取りやすいうえ、コーナーに炊飯器などの調理家電も置けます。対面・壁向き・横並びのどれにも対応できる、自由度の高い形です。
アンケートで多かったのは、50代以上で子育てが終わったご夫婦や平屋を建てる方、今の住まいの家事動線や水まわりの古さに不満がある方でした。住宅会社は約6割が一般の工務店で、間取りの自由度が高い会社が選ばれているようです。
注意したいのは、キッチンの背面にデッドスペースができやすいことです。次の間取りでは、冷蔵庫の前の部分がデッドスペースになっています。

解決策のひとつは、キッチンとカップボードを一体にしたコの字キッチンにすることです。コーナーのムダがなくなり、シンク・コンロ・収納に最短で手が届きます。ただし費用はかなり上がり、奥行きも一般的な対面キッチンより30cmほど多く必要です(必要な寸法はペニンシュラキッチンとほぼ同じです)。
12位:II型(セパレート)キッチン
II型キッチンは、コンロのカウンターを壁側、シンクのカウンターを対面側に2列に分けて配置したキッチンです。シンク側を島型にして開放感と2方向の動線を確保しつつ、コンロは壁向きなので煙やにおいがリビングに広がりにくいのが魅力です。
選んでいるのは、30代前半で子どもが3人以上いるご夫婦や、予算5,000万円以上・35坪以上の家を建てる方が中心でした。住宅会社では、積水ハウスと住友林業が全体平均よりかなり多くなっています。
注意点は、水を入れた鍋を持って振り返る動きが出ることです。通路に水が垂れやすく、普通のキッチンとは動きが違うので、採用前にショールームで実際の動きを試してみてください。
11位:壁付けキッチン
壁付けキッチンは、キッチンを壁に付けて配置する昔ながらのレイアウトです。10人に1人が選んでいるのは意外でしたが、最近はデザインもかなり良くなっています。
ダイニングと一体で使えて配膳や片付けがしやすく、壁にコンセントを付けやすい、窓から景色を楽しめるなど、メリットは多いです。何よりLDを広くでき、標準仕様で予算も抑えられます。選んでいるのは、単身や夫婦のみの世帯で、コンパクトな家を建てる方が中心でした。
一方で、リビングの子どもの様子が見えにくいことと、ダイニングテーブルが物置きになりやすいことがデメリットです。1〜2人の暮らしなら問題になりにくく、収納をしっかり確保すれば解決できます。対面や横並びがどうしても収まらないときの選択肢として覚えておくと良いですね。
10位〜8位:玄関直結パントリー・ダイニング収納・アイランド
10位:玄関直結パントリー
玄関からパントリーに入り、そのままキッチンへ抜けられる間取りです。買い物の後すぐ食材をしまえて、生活感をリビングに持ち込まない家事ラク動線の代表として提案されることが多い間取りです。
選んでいるのは50代前半のご夫婦などで、今の住まいの間取りや家事動線に不満がある方が62%と高めでした。住宅会社は一般の工務店が68%です。
ただ、私が間取り診断をする限り、動線がうまくいっている例はそう多くありません。次のような家族玄関の場合、家族の靴をよけながら入ることになり、框の幅も90cmほどと狭くなりがちです。

しかも買い物袋の中身は、結局キッチンのカウンターに置いて、冷蔵庫・カップボード・パントリーに仕分けることになります。つまり玄関とパントリーが直結するメリットは限定的なのです。
うまくいくのは、玄関の横にパントリーがある形です。公式テキスト『この間取り、ここが問題です!』の事例20・Wさんの改善間取りでは、玄関から見て左がリビング、右がパントリーで、正面は壁なのでパントリーの中は見えにくくなっています。

9位:ダイニング収納付きキッチン
キッチンのダイニング側に収納カウンターを設けたタイプです。食器やカトラリー、子どもの学用品の置き場として便利そうに見えます。選んでいるのは30代後半で夫婦と子ども2人の世帯が中心でした。
注意したいのは、収納の奥行き30cmに加えて、前に50cm以上の空間が必要になることです。そのぶんLDが狭くなります。

16畳の東西型LDKでは、ソファとダイニングテーブルだけでかなり窮屈になります。18畳でも、ダイニング収納を付けるとテーブルとソファがくっついてしまいます。採用するなら19〜20畳は欲しいところです。

8位:アイランドキッチン
壁に接することなく、空間の中心にキッチンを置くのがアイランドキッチンです。キッチンが主役のリビングにでき、2方向から使えるので冷蔵庫の位置も決めやすく、配膳や片付けも楽です。
選んでいるのは40代前半、予算5,000万円以上・35坪以上の家を建てる方が中心で、吹抜けのあるLDKを考えている方も多いです。住宅会社は住友林業が多めでした。
これは構造の話が大きいと思います。一般的な大きさのアイランドキッチンを入れるには、リビングの幅が最低でも4,550mm必要です。一般的な木造軸組工法では、柱のない最大の幅はおおむね3,640mmなので、アイランドは入れにくいのです。

採用するときは、キッチン全体が見えるので散らかって見えやすいこと、油はねやにおいが広がりやすいこと、ベビーゲートを付けにくく小さな子どもがコンロに近づきやすいことを理解しておきましょう。
7位〜5位:横並び・浄水器一体水栓・対面キッチン
7位:キッチン横並びダイニング
キッチンとダイニングテーブルを横一直線に並べたレイアウトです。配膳や片付けがしやすく、料理の合間にテーブルで休んだり、子どもの勉強を見たりもしやすくなります。費用アップなしで採用できるので、予算を抑えたい方にも選ばれています。
私もよく提案しますが、ひとつ大きな問題があります。それは、うまくはまるリビングの型が「L型」と「キッチン中心型」の2つだけだということです。

それ以外の型で無理に横並びにすると、通路がムダになったり、ソファが置けなかったり、キッチンの前に謎空間ができたりします。次のSさんの間取りでは、結局対面キッチンに変更しました。横並びにしたいときは、まずリビングの形から考えてください。

6位:浄水器一体水栓
水栓の中に浄水機能が組み込まれ、レバーやボタンで原水と浄水を切り替えられるタイプです。シンクまわりに物が出ず、ウォーターサーバーの置き場やボトルの管理もいらなくなります。標準仕様やキャンペーンに含まれるかどうかで、採用率が大きく変わる設備です。
採用前に確かめたいのは3つ。カートリッジの交換費用と時期、お湯は浄水できない製品が多いこと、水道水より出が弱く感じることです。シンク下に浄水器を置くビルトインタイプもあり、浄水能力が高くカートリッジも長持ちしやすい反面、シンク下の収納が少し減ります。
5位:対面キッチン
ここでいう対面キッチンは、キッチンの手前に造作のカウンターや腰壁を立ち上げて、ダイニング側を向くようにしたタイプです。限られた面積と予算の中で、家具の配置まできちんと収めたい方に選ばれている印象です。
一番のメリットは、LDのスペースを最大限確保できることです。造作部分も含めて幅80cmほどに収められ、立ち上がりにコンセントも付けられます。コンロ側が壁になることが多く、そこを耐力壁として使えるので、耐震等級3を目指すときにも効いてきます。
注意点は、造作だからといって家具配置を考えずにカウンターを広げてしまうことです。カウンターで食事をするなら椅子のスペースも必要なので、ある程度広いリビングでないと成り立ちません。
4位〜2位:ペニンシュラ・タッチレス水栓・フロントオープン食洗機

4位:ペニンシュラキッチン
ペニンシュラは英語で「半島」という意味です。キッチンのコンロ側だけが壁に接していて、半島のように見えることから名付けられました。採用したい人は44.8%。25〜35歳の子育て世帯で、予算3,000万〜5,000万円・30〜35坪という、注文住宅のど真ん中の層に選ばれています。
アイランドキッチンのデメリットをある程度解消し、リビングの幅が3,640mmあれば採用できるのが強みです。壁があるので油はねもしにくく、レンジフードもアイランド用より手頃なものを選べます。レンジフード側に通路を設ければ、アイランドと同じ回れる動線にすることもできます。
3位:タッチレス水栓
手をかざすと水が出るセンサー式の水栓です。肉や魚を触った手でレバーを汚さずに済むのが一番のメリットで、節水にもつながります。
一方で、10年、20年と使えば交換も必要になり、そのたびに工事費を含めた費用がかかります。ここは価値観しだいなので、ショールームで使い心地を確かめて、気に入れば採用してよいと思います。
2位:フロントオープン食洗機
扉が手前に倒れ、中のカゴを引き出して使う食洗機です。海外メーカーのものが有名ですが、最近は国内メーカーからも出ています。予算に余裕がある方ほど採用率が上がる、分かりやすい結果になりました。
魅力は容量の大きさで、鍋やフライパン、大皿までまとめて洗えます。採用前に確かめたいのは3つです。
フロントオープン食洗機の確認ポイント
- キッチンの通路幅:扉を開くと通路がふさがる。通路90cmだと窮屈に感じやすい
- 収納が減る:幅60cmの機種は、一般的な45cm幅より15cm分キッチンの収納が減る
- そこまで洗うものがあるか:2人暮らしなどなら標準の食洗機で十分なこともある
1位:パントリー(74.3%)
第1位はパントリーです。74.3%、631人中468人が採用したいと答え、2位に約20ポイントの差をつけました。どんな属性、どの住宅会社で建てる方にも、ほぼ偏りなく選ばれています。
災害に備えたローリングストックや、在宅時間が長い方のセカンド冷蔵庫置き場など、食料品をストックする家庭が増えていることも背景にあると思います。ただ、パントリーの本質を理解せずに採用すると、収納効率が悪くなったり、面積をムダに使ったりします。失敗例を2つ紹介します。
失敗例1:通路のために一番使いやすい収納を犠牲にしている
公式テキストの事例03・Yさんの間取りです。キッチン背面に大容量のパントリーがありますが、注目してほしいのはパントリーへの通路です。キッチンから1m以内のこの部分は、本来とても使いやすい収納にできたはずです。

この間取りは他にも問題があったため、東西型のリビングにして北側にパントリーを計画し直しました。キッチン背面に幅2.7mの収納を取ったうえで、キッチン通路の延長上にパントリーを置いています。よく使うものは背面に、ストックはパントリーにと分けられ、片付けの動線も短くなりました。

失敗例2:カップボードの奥にあるパントリー
2階リビングのTさんの間取りでは、カップボードの奥にパントリーがありました。どちらにしまったか分からなくなりやすく、動線も行ったり来たりになります。

改善後は、キッチン背面に1か所、キッチンに入る通路部分に1か所パントリーを設け、予備の収納も用意しました。パントリーを付けたことで家事がしにくくなっては本末転倒なので、実際に使いやすいかを必ず確かめてください。

キッチン選びは「みんなが選ぶ理由」と「自分の間取り」の両方で考える

人気の間取りや設備には、それぞれ選ばれる理由があります。ただし、リビングの形や広さ、構造、予算によって、うまくはまるかどうかは変わります。
この記事のポイント
- L型・アイランド・ダイニング収納付きは、必要な寸法を先に確かめる
- 横並びはリビングの型(L型・キッチン中心型)から考える
- 玄関直結パントリーやパントリーは、実際の片付けの動線で使いやすいかを確かめる
- 設備はショールームで使い心地と交換・維持の手間を確かめる
「みんなが選んでいるから」ではなく、自分たちの間取りと暮らしに合うかという目で選んでみてください。
間取りで後悔しないために

1.自分の間取りを一級建築士に見てもらう(間取り診断)
3,500件以上の間取り診断をしてきた私が、あなたの図面を直接チェックします。敷地の条件や30年後の暮らしまで考えて、複数の改善案をご提案します。間取りが確定する前のご相談がおすすめです。
2.WEBセミナーで家づくりの基本を学ぶ
「30年後も後悔しない注文住宅の作り方」を、スマホで見られるWEBセミナーにまとめました。契約・間取り・窓計画など、施主が知っておきたいポイントを順番に解説しています。
3.書籍『この間取り、ここが問題です!』(講談社)
間取り診断で実際によく見る「ダメ間取り」と、その直し方を1冊にまとめた本です。自分の図面を見直すときの手引きとしてお使いください。
4.YouTube「アキラ先生の住まいの間取り教室」
実際の間取り診断の事例を、ビフォー・アフターの図面で毎週解説しています。動画で見ると、問題点と直し方がよりイメージしやすくなります。


