間取りのセカンドオピニオンで一級建築士の船渡亮(ふなとあきら)です。今回は、YouTubeチャンネル「アキラ先生の住まいの間取り教室」で紹介した間取り診断の事例を、動画の解説画面を使って記事でも解説します。
敷地は、南と西が広い道路に面した一日中日当たりの良い南西の角地。提案された間取りも、駐車場から近い玄関、土間収納、開放的な吹抜け、広いランドリーと、一見よくできています。ところが中身を見ていくと、せっかくの好条件をまったく活かせていない、かなり暮らしにくい間取りでした。
この記事でわかること
- 日当たりの良い角地で、リビングをどこに置くべきか(敷地の「特等席」)
- 西向きの吹抜けや狭い帰宅動線で起きること
- 「間取りの型」を使った改善後の間取り
施主Sさんのご家族と敷地

施主のSさんは30代のご夫婦と、0歳の娘さんの3人家族です。もう1人お子さんを希望されています。ご主人が掃除とゴミ出し、奥さまが家事全般を担当しています。家づくりのきっかけは、お子さんが生まれたことでした。
敷地は約57坪の南西の角地です。南側・西側の道路は幅も広く、一日を通して日当たりの良い敷地です。東側と北側には住宅が建っています。
最初に提案された間取り(ビフォー)

最初に提案されたのは、家の真ん中に吹抜けのあるリビングを置き、西向きに開いた2階建てです。玄関は駐車場の近くにあり、1階には予備室と3帖のランドリー、2階には主寝室と子ども部屋2室があります。
アキラ先生暮らしにくい間取り選手権があったら、1位を取れそうな間取りです。どういう考え方でこの配置になったのか、正直、理解に苦しみます。
ダメ間取りポイント7つ


1.リビングが「特等席」にない


ピンクの斜線の部分が、空いている南側です。道路があり、敷地にも余裕があって、日当たりも眺めも良い。この敷地の「特等席」は素直に考えると南側です。ふつうはここにリビングを持ってくるのですが、この間取りではリビングが家の真ん中にあり、しかも西を向いています。
西側にとても良い景色があるなら分かります。でも、Googleマップで見てもSさんに聞いても、道路をはさんで普通の住宅があるだけで、特に見るものはありません。特等席をまったく活かせていないのが、いちばんの問題です。
2.強烈な西日だけを入れる吹抜け


しかも、その西向きのリビングに吹抜けがあります(ピンクの枠と矢印)。吹抜けはふつう、日当たりを良くするために設けますが、この場合は西日をたくさん入れるためにつくったのではと思えるほどです。吹抜けのある大きな窓がすべて西向きなので、夏の夕方は西日が直撃します。
一方で、玄関は駐車場から近く、南側に窓があって明るいのは良いところです。土間収納も広く、下駄箱も1.6mあり、玄関の大きさもちょうど良いと思います。
3.帰宅動線が狭すぎる


玄関から中に入ると、すぐ正面にダイニングテーブルがあります。ここに誰かが座っていると、その後ろの約30cmのすき間を通って帰らなければなりません。ダイニングテーブルとリビングの間も約50cmしかなく、テーブルを大きくすればもっと狭くなります。買い物から帰ってキッチンへ、手洗いへ、という動きも窮屈です。
狭小住宅でどうしても、というなら仕方ありませんが、これだけ広い敷地でこの動線になる理由はありません。どうしてもこの間取りで進めるなら、リビングへのドアの位置を変えるだけでもかなり違います。
4.寛げないLD


ソファやダイニングに座っていても、誰かが外へ出るたびにすぐ横を通ります。座っている人は姿勢を正したり立ったりしなければならず、通る人も狭いところを抜けていく。毎日のことなので、かなりのストレスになります。
一方、水回りは良くできています。ランドリーが3帖あり、洗面化粧台がすぐ隣、トイレも横から入れます。予備室も、老後に2階へ上がるのがつらくなったときに寝室として使える、活用しやすい部屋です。
5.トイレの音がリビングに響く


2階のトイレは、吹抜けに面した位置にあります。用を足す音や水を流す音が、吹抜けを通してリビングに響きます。壁やドアを追加すれば解決できますが、建ててしまってからではなかなか大変です。
6.主寝室からクローゼットが遠い


主寝室は約8帖と広くて良いのですが、収納がありません。クローゼットは、さきほどのトイレの横にあるファミクロ的な収納だけで、主寝室からは離れています(赤い線)。子どもに見せたくないものや個人的なものは、共用の収納より寝室の近くに置きたいもの。少しでも良いので主寝室の近くに収納が欲しいところです。
7.書斎がない
Sさんは書斎を希望していましたが、計画されていませんでした。今は子ども部屋が空いているので使えますが、子どもが大きくなったり、2人目が生まれたりすれば明け渡すことになります。予備室を使う方法もありますが、いつ・どう使うかによるので、必要ならしっかり書斎を計画すべきです。
改善後の間取り(アフター)


7つの問題点をすべて解決して、Sさんが最終的に採用した間取りがこちらです。最初の間取りのリビングは、どの「間取りの型」にも当てはまらない形でした。型に入っていない間取りは、暮らしにくくなっていることが多いのです。
南側に、定番の「東西型」LDKを置く


改善案では、南側の特等席に定番の東西型リビングを置きました。キッチン、ダイニング、リビングがすべて南に面し、とても日当たりが良くなります。吹抜けは、なくても十分明るいことと、Sさんが音の反響を気にされていたことから採用していません。
最初の間取りには「玄関が駐車場から近い」というメリットがありました。それを活かす案も検討しましたが、Sさんは日当たりの良いリビングを優先し、駐車場から玄関が少し遠くなることは受け入れることにしました。提案された間取りを少しずつ直すのではなく、いったん型を当てはめてから、何を優先するかを比べるのがコツです。
水回りを北側にまとめ、予備室とランドリーをつなげる


玄関を入ると、左手に独立した洗面化粧台とトイレ、その奥にランドリーとお風呂と、水回りを北側にまとめました。ランドリーは予備室(畳の部屋)とつながっているので、子どもを遊ばせながら、家族と話しながら洗濯物をたためます。
私は「家事時短」を、家事が早く終わることではなく、自分の自由な時間が増えることだと考えています。家族がみんな寝たあとに洗濯物をたたむのではなく、育児や会話をしながら家事が終わる。そういう間取りを意識しています。玄関から右へ行けばダイニングで、正面に見えても十分な距離があるので気になりません。
階段上のファミクロと書斎


2階は、階段を上がってすぐの場所にファミリークローゼットを設け、主寝室からも共用でも使えるようにしました。南側に子ども部屋、西側に書斎があります。西側は西日しか入らず眺めも良くないので、窓は最小限にしています。吹抜けをなくした代わりに、バルコニーを設けました。
リビングと動線で見る3つのポイント


今回の間取り診断で、特に気をつけたいポイント
- リビングは特等席に置く:一般的には南側。西に富士山、北に海など眺めがあるなら、その方向が特等席
- 間取りの型を使う:型に当てはまる間取りは、動線も寛ぎやすさもほぼ問題ない
- 動線はシンプルにする:まず玄関からキッチンまでの帰宅動線を考える
3,500件以上の間取り診断をしてきましたが、条件の良い敷地ほど、配置のミスで大きく損をしているケースは珍しくありません。「日当たりが良い土地だから大丈夫」と安心せず、どこを特等席にしているかを図面で確かめてください。
間取りで後悔しないために


1.自分の間取りを一級建築士に見てもらう(間取り診断)
3,500件以上の間取り診断をしてきた私が、あなたの図面を直接チェックします。敷地の条件や30年後の暮らしまで考えて、複数の改善案をご提案します。間取りが確定する前のご相談がおすすめです。
2.WEBセミナーで家づくりの基本を学ぶ
「30年後も後悔しない注文住宅の作り方」を、スマホで見られるWEBセミナーにまとめました。契約・間取り・窓計画など、施主が知っておきたいポイントを順番に解説しています。
3.書籍『この間取り、ここが問題です!』(講談社)
間取り診断で実際によく見る「ダメ間取り」と、その直し方を1冊にまとめた本です。自分の図面を見直すときの手引きとしてお使いください。
4.YouTube「アキラ先生の住まいの間取り教室」
実際の間取り診断の事例を、ビフォー・アフターの図面で毎週解説しています。動画で見ると、問題点と直し方がよりイメージしやすくなります。










