間取りのセカンドオピニオンで一級建築士の船渡亮(ふなとあきら)です。今回は、YouTubeチャンネル「アキラ先生の住まいの間取り教室」で紹介した間取り診断の事例を、動画の解説画面を使って記事でも解説します。
敷地は西側道路の敷地延長ですが、南側が月極駐車場で、しかも1mほど低くなっているので、今は日当たりの良い土地です。最初の間取りもキッチン横の収納がしっかりあり、お風呂も広く、一見よさそうに見えます。ところが中身を見ていくと、「わざわざ使いにくくしているのでは」と思うほど問題の多い間取りでした。
この記事でわかること
- 南側が駐車場でも隣地から3mは空けたほうがいい理由
- 南の窓を小さくして東を開ける間取りの問題
- 動線だらけで物が置けない水回りと、幅1250mmのランドリー
- 母の部屋からトイレまで10mある問題
- 音に敏感な家族がいるときの子ども部屋の配慮
- キッチン中心型のLDKで直した改善後の間取り
施主Aさんのご家族と最初の間取り(ビフォー)

施主のAさんは40代の女性で、お子さん2人とご両親の5人家族です。工務店から提案された間取りが上の図です。
敷地は67坪の敷地延長で、道路は西側です。南側は月極駐車場で1mほど下がっているので、今は日当たりの良い敷地です。東側には家が建っています。ただし、南側の駐車場に将来なにか建つことは想定しておいたほうがよさそうです。
提案された間取りは1階にLDKと水回り、お母さんの部屋、2階にAさん・お父さん・息子さん・娘さんの部屋がある構成です。キッチン横にはAさんの希望で広いパントリーがあり、玄関収納も2.6m分あります。玄関を入って正面が壁になっているのも、デザイン的にかっこいいと思います。良いところもあるのですが、問題点は7つありました。
ダメ間取りポイント7つ

1.南側の隣地距離が狭すぎる

南側の駐車場から光は入るとはいえ、さすがに近すぎます。建物から南の隣地までは、リビングの前で1.8m、お母さんの部屋の前で1.3mしかありません。今は駐車場でも、将来家が建てば南からの日差しは全滅する可能性があります。3mくらいは空けたいところです。
2.南側の窓が小さい

隣地距離よりもっと問題なのが、南の窓が小さいことです。お母さんの部屋は掃き出し窓なので良いのですが、リビングの南の窓はテレビの上に付いている窓で、高さはせいぜい50cmほどを想定しているようです。せっかく南に窓があるのに、それほど日差しが入りません。
一方、東側の窓は掃き出し窓です。東側には家が建っていて、眺めが良いわけでもありません。これはAさんが望んだものではなく、ハウスメーカーが提案してきたものです。敷地の価値は東より南のほうが高いので、南を開けるように計画したほうがいいです。将来南に家が建ったときのリスクヘッジにもなります。
3.キッチンが暗い

この間取りは南北型のLDKです。南北型自体は構わないのですが、キッチンは奥のほうになって南の窓・東の窓どちらの光も届きにくくなります。真っ暗ではありませんが、これだけ広い敷地なのに明るさが足りません。この間取りで行くなら、少なくともキッチンまわりに小窓を設けたほうがいいでしょう。
4.水回りがとんでもなく非効率

帰宅して手を洗おうと洗面所に入る場面です。洗面所とトイレの位置は良いのですが、洗面所に入ってからお風呂に入るまでの動線を書いてみると、大きなスペースを使っているのに、洗濯物を干す場所や物を置く場所がほとんどありません。ほぼ動線だけという状態です。洗面所はこれだけ広いのに、洗面化粧台はこれだけ。プロが提案したものとは思えない水回りです。
5.ランドリーが狭すぎる

洗濯機は置いてありますが、この部分の幅は1250mmほどしかなく、洗濯機の前のスペースはせいぜい55cmくらいです。これでは使えません。なぜこちら側から入るようにしたのかもよく分かりません。
最初のプランなので「たたき台だから」と描いたのかもしれませんが、施主が気づかずにそのまま進んでしまう可能性もあります。お客様に出す以上、きちんと検討したものを出してほしいところです。
6.母の部屋からトイレが遠い

お母さんの部屋は、お母さんの希望でリビングとつながる位置にあります。今はお元気ですが、夜中にトイレに行くこともあるでしょう。この間取りだとリビングを通ってトイレに行くことになり、距離は10mほどあります。分譲マンションなら玄関から南側のリビングの窓までくらいの距離です。ベッドの位置によってはさらに遠くなります。
7.音への配慮がない

2階は、お母さん以外の家族の部屋が並んでいます。娘さんは音に敏感で、家族の生活音が苦手です。Aさんはそのことを工務店に伝えていたのに、配慮がまったくありません。リビング階段なので、1階の音が子ども部屋に筒抜けになります。
この敷地なら吹抜けを付けることも考えられますが、音のことがあるのであえて付けていません。それなら、子ども部屋への音の配慮はもっとあってしかるべきです。
改善後の間取り(アフター)

7つの問題をすべて解決し、最終的にAさんが採用したのがこちらの間取りです。今回も間取りは大きく変えました。いちばん大きく変えたのはLDKの形で、キッチン中心型というLDKの型を使っています。
改善のポイント
南の隣地から3mを確保

キッチン中心型は、南の隣地との距離が取りにくいときに距離を確保しやすいのが特徴です。ダイニングとリビングのうちリビングを引っ込めることで、隣地から3mを確保しました。南に何か建っても、冬至の頃は光が入りにくいかもしれませんが、2月ごろからしっかり日差しが入ります。この3mがリスクヘッジになります。
南に大きな窓を3つ、母の部屋は将来のスロープも想定

南側にはダイニング・リビング・お母さんの部屋と、大きな窓を3つ確保したので、とても明るいLDKとお母さんの部屋になっています。
お母さんの部屋の東側は大きな掃き出し窓にしました。将来車いすが必要になったときに、ウッドデッキとスロープを設けて、フラットに自分の部屋へ入れるようにするためです。段差解消機を後付けする方法もあり、レンタルにすれば費用を抑えられることもあります。後付けできるバリアフリー対策を最初から考えておくと、あとで困りません。
玄関からパントリー、キッチンへ短い動線
玄関収納は、160cmの下駄箱で足りると分かったのでその大きさにしました。階段下は生協の通い箱などを入れる収納です。玄関から入ってすぐパントリー、キッチンという流れなので、買ってきた物をしまう動線も短くなっています。
キッチンの延長上にダイニングがあるので配膳がラクで、キッチンの正面にリビングがあり、リビングとダイニングをゆるやかに分けています。ダイニングからテレビを見たい家族には向きませんが、Aさんのご家族は食事中にテレビを見ないので、この形を採用しました。
母の部屋からトイレがすぐ近くに

お母さんの部屋とリビングは3枚引き戸で仕切り、昼間はほとんど開けておく使い方です。トイレはお母さんの部屋からすぐ近くになりました。近いけれども、間に収納を挟んで音がお母さんの部屋に伝わりにくくしています。
洗面・ランドリーは一直線で、広さも確保

最初の間取りは動線だらけでしたが、改善後はランドリーへ一直線に入れて、トイレへの動線もシンプルになりました。ランドリーの広さもしっかり確保したので、室内干しもできますし、スロップシンクで下洗いもできます。
娘さんの部屋は引き戸と防音ドアで二重に

2階の部屋の位置は大きく変えていませんが、娘さんの部屋に入る手前に引き戸を設けて、1階からの音をある程度シャットアウトします。さらに娘さんの部屋のドアを防音ドアにして、二重で音を防ぐようにしました。まったく音が入らないわけではありませんが、生活音はかなり防げます。
独立階段にすれば音対策はしやすくなりますが、リビング階段にしつつ特定の部屋の音を抑えたいときは、このようにドアを設けるのが有効です。音に敏感なお子さんがいる場合や、音を出す部屋がある場合は検討してみてください。
今回の間取り診断で特に気をつけたい3つのポイント

自分の間取りでもチェックしたいポイント
- 南側の隣地とは3m空ける:目の前が駐車場でも、将来何か建つ可能性があります
- 適切な間取りの型を使う:会社の標準プランを変形した間取りは使いにくいことが多いです
- 寝室とトイレは近くに:できれば3m程度でトイレに行けると、高齢になったときも安心です
アキラ先生寝室からトイレまでの距離は、図面で実際に測ってみてください。夜中に歩く距離として長すぎないか、家族の年齢が上がったときのことも考えておくと安心です。
間取りで後悔しないために


1.自分の間取りを一級建築士に見てもらう(間取り診断)
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間取り診断で実際によく見る「ダメ間取り」と、その直し方を1冊にまとめた本です。自分の図面を見直すときの手引きとしてお使いください。
4.YouTube「アキラ先生の住まいの間取り教室」
実際の間取り診断の事例を、ビフォー・アフターの図面で毎週解説しています。動画で見ると、問題点と直し方がよりイメージしやすくなります。










