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注文住宅の打ち合わせでVRを使うメリットとデメリット~VR CADソフト紹介①~

VRが流行していますが、もう体験されましたか?

プレイステーションなどのゲーム機で体験している方も多いかと思いますが、徐々に浸透している感じがしますね。先日、ソニーの技術者の方と話をしたのですが、スポーツ観戦やコンサートもVRで撮影して見れるような試みがされているようですね。

2016年は、主要なヘッドマウントディスプレイが出そろったことからVR元年と呼ばれていますが、昨年2017年には建築CADでもVRソフトが出そろった感があります。大手ハウスメーカーの積水ハウスも住宅展示場にVRを導入していますね。

積水ハウスは注文住宅の提案営業に仮想現実(VR)技術を導入する。スマートフォン(スマホ)を差し込むと室内空間が立体的にみえるメガネを開発。コンピューターの設計システムと連動させ、提案した住宅プランの室内を顧客が臨場体験できるようにする。25日にも全国403の住宅展示場で導入し、年末年始の来場者を前年比2割増の3万組とすることをめざす。 <日本経済新聞>

現在は、「客寄せパンダ」的に、集客ツールとして使われているVRですが、個人的には打ち合わせツールとしてのポテンシャルが高い、という風に感じています。じゃあ、実際どうなのか?を確認するために、VRソフトウェアの大手2社(コンピューターシステム研究所福井コンピュータ)でVRを体験してきました。3回に分けて、レポートしていきますね。

 

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目次

住宅のVRはどのように体験するのか?

詳しく説明する前に、まずどんな感じでVRって体験するのか?を知ってもらいます。
コンピューターシステム研究所の営業の方にモデルになってもらったのが上記の写真です。
このようにヘッドマウントディスプレイをかぶって、手にはコントローラーを持つ感じですね。

この会場が体育館のように広い空間ならVR空間を歩き廻ることも可能ですが実際は狭い会議室などで体験することがほとんどですので、歩くのは危ないので厳禁。しゃがんだり座ったりするのはOKですが、場所の移動はコントローラーで行います。

また体験者の近くには高性能のPCとディスプレイをおいて、外の人がVR上でどこにいて何を見ているかがわかるようにもなっています。打ち合わせの場では、施主がVR体験中に営業や設計者がナビゲートしたり、1階から2階に移動させたり(体験者自身で移動も可能ですが、時間を短縮する場合)することが出来ます。

では、VRによって家づくりの打ち合わせがどうなるのか、を話していきますね。

住宅打ち合わせを変える!VRの3つのメリット

私は、『注文住宅を建てるとき、施主にはクリアすべき8つの難題がある』、電子書籍『注文住宅8つの難題』で書きました。
その難題の1つが、『どんな家が建つかわからない』です。

分譲マンションや建売住宅と違い、注文住宅が難しいのは『実物がない』ことですね。同じ実物がないものでもオーダーメイドの洋服の場合は、完成してからの多少の調整は可能ですが、家の場合は完成したら調整はほぼ不可能です。

設計士は経験もあるので、ある程度どのようになるかは理解していますが(たまに分かってない人もいますが)、一般の方の場合は初めて家を建てるのがほとんどですから、今打ち合わせしている我が家が実際、どのようになるのか?を理解するのは至難の業です。

それが『どんな家が建つかわからない』という難題なのですが、これをクリアするためには、間取り図だけでなく、パース(図面を立体化したもの)や模型を作ってもらうことや、動線を理解するために間取りで暮らしてみる(拙著『間取りで暮らす技術1』を参照)ことが必要になります。

この難題をVRはある程度解決できるのではないか、という期待を私はしています。

理由としては、VRならではの3つの特徴からです。
拙著『最高のハウスメーカー&工務店の選び方2018』で詳しく説明していますが、ここではポイントだけ紹介しますね。

広さや高さを確認できる

打ち合わせをしていて結構わかりにくいのが、広さや高さです。
日本には、『畳』という単位があるし、日本人自体は間取りを読める人が多いのですが実際、どれだけの大きさになるかはわかりにくいものです。
これまでもCGパースなどで室内の雰囲気を表現することは出来ましたが、アレ、以外に広く見えちゃうので(というが設計者は広く見せるために、実際にはあり得ないようなアングルでパースを作ったりします)広さ感という意味では、アテになりません。

VRの場合は、目の前にどのままの大きさの建物(室内も外観も)立ち上がりますから、実際の大きさ、そのものを見ることができます。もちろん高さも忠実に再現されていますので、カウンターやテーブルの高さもわかります。

VR体験中は、ヘッドマウントディスプレイの他に、コントローラーを両手に持つのですが、コントローラーがVR上の物質にぶつかるとブルルと振動を感じますので、そこに物質があることが体感できるんです。そのためキッチンやカウンターなどの高さの確認をVR上で出来る、というわけです。

季節ごとの日当たりを確認できる

日当たりを施主に理解してもらうことも、住宅の打ち合わせでは難しいですね。というか、設計者も陽当たりが良いか悪いかをシミュレーションしてない人が多いです。(そのため私が行っている間取り相談では、日当たりが良いでしょうか?という相談が毎回あります)

これまでの日当たりを確認するためのツールはありましたが、VRの場合は、実際に室内にどのように光が入るか、を体感することが出来ます。例えば冬至(一年で一番日が短い日。12月21か22日ころ)の日当たりを知りたい場合、近隣の家もVR上に再現すれば、日の出から日没までを早回しにして体験することが出来るのです。

実際、私も今回紹介するALTAで体験したのですが、非常にわかりやすくて感動しました。

これまでは例えばこんな感じの図で、光が入りますよ、って説明していたんですね。ですが、この図、実際は冬至の南中時刻(12時ころ)の一瞬を表現しているに過ぎません。日時によって全然光の入り方は違うのですが、とりあえずこういう図を見せて納得してもらう、という風にしてきました。(こういう図も見せない設計者が大半ですが)
ですが、VRであれば、窓やカーテン、ブラインドなども全て表現できますので、まさにそこにいるかのように実感することが出来ます。

仕上げを瞬時に変更し確認できる

仕上げ選びも住宅では難しいですね。2次元のパースで表現することも出来ましたが、アングルによって見え方も違いますから、VRで体験できると非常にわかりやすいです。
しかも、その場で仕上げは変更できますから仕上げの方向性を決める上では、非常に有効です。

VR上である程度方向性を決め(床は濃い色にし、壁天井は白系でまとめる、など)、最終的には実物サンプルで決定する、という流れが出来ると間違いがないですね。

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VRのデメリット

メリットの大きいVRですが、あえてデメリットも紹介します。
デメリットというか今後の課題といった方が良いかもしれませんね。

・複数で体験できない


写真でもあるように、通常ヘッドマウントディスプレイをかぶるには一人です。そのため夫婦で同じものを見る、というのが難しいんですね。プロジェクターに画像を映して、3D眼鏡で見るという方法もあるのですが、広い場所が必要なのとVRの没入感は薄れそうです複数ヘッドマウントディスプレイがある場合でも、移動などの操作できるのは一人のみになります。

またこれは設計者としての発想になりますが、ヘッドマウントディスプレイをしていると施主の表情がわからないのも難点です。
逆に紙で出力したパースの場合は、それを見ている時の施主の表情がわかりますね。
はっきりと言語化でき、気持ちを表現できる方なら良いのですが、『ちょっと違うな』みたいな表情を読み取るのって打ち合わせでは重要です。

紙の間取り図やパース、オープンハウスや住宅展示場で打ち合わせする場合は、皆で空間を共有できるますがそれが出来ないのは、現状のVRのデメリットと言えます。

動線を理解するのは難しい

前述のとおり、VR空間では歩き回れることが出来ません。コントローラーで移動は出来ますがそのスピードと歩く体験とは別物ですね。例えば、1階の洗面脱衣室で洗った洗濯物を2階のベランダで干すのは、どれだけ時間がかかり大変か、といったことはわかりにくいです。

また長時間、体験するものでもないので、どのような暮らしが出来るのか?を実感するのも難しいです。
家事動線や生活動線については、やはり間取り上でシミュレーションしたり、キッチンなどのショールーム、住宅展示場などで実物を見ながら考えたりした上で、VRで最終確認する、というステップを踏むのがよいかと思います。

VR空間とリアルな家で不整合が起こる

CADで作るVR空間は、基本CGで表現しているので実際とは違います。ですが、そのVR空間に没入するとかなりのリアリティーを感じることが出来るんですね。そこに物質があるかのように感じることが出来ます。

ですから、VRで表現されているものが、そのまま実物になるのではないか?と思ってしまうのですが、そうとも限らないです。
完璧な最終図面でVR空間を立ち上げるのであれば良いですが、基本、打ち合わせの途中でVRを体験しますから最終形とは違います。

VR上ではどんな空間も成立しますが、実際の空間は構造や納まりによって成り立っています。
VR空間と設計図との不整合があったり、そもそも図面に問題があり現場が違うことになったりと注文住宅では色んなことが起こります。

ハウスメーカー側からは、VRを体験してもらう施主には『あくまでイメージですから』という枕詞が入りそうですね。

導入費用がかかる

ハウスメーカー側の問題ですが、導入費用が結構ネックになりそうです。
CADは無料のものもあるし、パースは手書きでも可能ですが、VRを導入するとなると最低でも100万円以上はかかります。
そのためソフトウェア会社としては、「販促として効果的ですよ」という売り方になっていますね。

ぶっちゃけた話、スーモなどの紹介会社を利用した場合には、ハウスメーカーからリクルートに100万以上(建築費の5%程度)は支払うことになりますから、それに比べたら、

VRで集客した方が安いでしょ?

という感じです。
どこまでVRに集客効果があるかはまだ未知数ですけど、一般に普及するためには、もう少し安価なソフトが必要になるかな?と思います。(まあ普及してしまったら集客効果は薄れてしまうのですが)

作りこむのに時間がかかる

打ち合わせで普通に3D CADを使っている会社にとっては、それほど増える作業がないはずです。
全部屋作りこむとなると大変かもしれませんが、リビングや廊下だけ、みたいな感じにもできますね。

ただ、間取り図しか書かない会社にとっては、3D CADにする、というだけで、とんでもなくハードルが高いです。
導入費用もそうですが、誰がやるんだよ?って話に必ずなります。

手間がかかる、ということは人件費がかかることになりますから、それは経費という形で、建築費に上乗せされます。
建築費が高くなるくらいなら、VRなんてなくても良い、という施主の方も多いでしょうし、なかなか難しいですね。

このように時間や費用のかかるし動線などは実感しにくいので、『VRさえあれば打ち合わせは完璧!』ってわけにはいかないのですが、それでも、あるとないのとでは、施主の理解は全然違います。

次回からは、実際のVR体験を紹介しますね。

では!

 

 

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この記事を書いた人

家づくりを通して、ライフスタイルをデザインして欲しい、という思いから、このブログを立ち上げました。二児の父でもあり、家事もバリバリこなすイクメンです。
一級建築士 / インテリアコーディネーター

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